モモカン「三橋君!どんな気持ちになったかな」

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284彼女がいる三橋
>>280
<一行空けてください>

「しょっぱか った?」
「え」
心配そうな三橋の顔が目前にある。口の中に広がっていたのは柔らかくて甘い卵のシンフォニーだった。あれ? どういうことだ。
「オレはちょうどいいぞー」
「オレもちょうどいいけど運動部員用に濃い目に作ってあるのかもな」
「そうかー。気の利く彼女じゃん!」
田島の笑い声がカラカラと屋上の風に乗る。青い空、白い雲。ここは屋上。
さっきまでの三橋の痴態は夢のようになくなってオレの視界に広がっているのは、弁当をぱくつく部員達だった。全部夢だったのか。どこから夢だったのか。
三橋の彼女作の弁当はあらかた無くなり卵焼きを一個残すばかりだ。
遠慮して手を出されない最後の一個にオレは躊躇なく箸を伸ばしていた。
「何だよ。文句言うやつが食ってんじゃねーよ」
膨れる田島を無視し噛み締める。
「三橋、うまいぞ」
三橋の彼女が作った卵焼きはうまくもまずくもない。バターとチーズが入った卵焼きというよりはオムレツで、ちょっと濃い目の普通の味だった。
オレはきっともっと上手に作れる。
「ほ、本当? よ、よろこぶ、よ!」
三橋が嬉しそうに顔を崩す。誰かのために笑っている三橋はすごく頼もしく見えた。
「おう。また作ってって言っといて」
「う、うん!」

三橋の彼女の卵焼きは甘くて少ししょっぱかった。