阿部「三橋、南京玉すだれって知ってっか?」

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717fusianasan
 NF 〜西浦ファンタジー〜

その日は練習が休みだったので、水谷は暇つぶしに栄口から借りたRPGをやる為に
FCの電源を入れた。何年も前に出たカセットで、ゲームの内容は知っているから、
そのままプレイしてもつまないかな、と思いながら氷が溶けた麦茶をコップ半分まで呷る。

「そうだ、あいつらの名前でプレイしてみよっと。」

田島が騎士。栄口は白魔で巣山は忍者。花井は神官、阿部はアサシン、西広は学者。
泉は青魔。沖は召還師で、自分はギャンブラーか何かでいいや、と適当にジョブを決めていく。
そしてやっぱり三橋で十字キーの手が止まる。
三橋はどう考えてもチョコボなのだ。だがジョブではない動物なので、
何となく弱そうなイメージの風水師に決定した。

物語が進むにつれ、いつの間にか没頭していたことに気付き、水谷は横のテーブルに置いた
麦茶を飲み干してしまおうと、TV画面から目を離さぬまま手を伸ばした。
案の定、掴もうとする前にズレた指先が、表面に水滴が沢山ついているコップを押しやって
ガタンッと倒れる。
「やっべ…!」
慌ててタオルか何か拭けるようなものを手近に探すが、焦ってしまって頭が回らない。
そうこうしている内に零れた中身がテーブルからポタポタと落ちていく。

運が悪いことに、たれた氷水の下にはだらしなく伸びたコードとコンセントがあった。
マズイ!と思った時には既に遅く、パチッと電気が走る嫌な音がした。
水谷は相当慌てていたのか、テッシュを数枚掴んだ手でビリリッと青白い閃光がある
場所を掴もうとした、その瞬間。

視界が真っ白な霧のようなものに包まれた。