阿部「三橋、南京玉すだれって知ってっか?」

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144介護

桐青戦で足をケガして療養中の俺を残し、両親もシュンも出かけてしまった。
両親が出かけてるのは気が楽でいいけど、シュンもいないのは困った。
マンガ持ってこいとか、飲み物持ってこいとか命令できる便利な弟がいないと、この足ではちょっと不自由がある。
最初の内は一人暮らし気分を満喫していたが、次第に便所に行くのや飲み物を取りに行くのがめんどくさくなってきた。
その矢先、玄関の方でチャイムが鳴る。
「んだよ、めんどくせーな。」
舌打ちをしつつ玄関に向かい、苛立たしげにドアを開いて驚いた。
「え・・・三橋?」
「う あ 阿部君。あの、あの あの お、オレ」
来客うっぜーっというのが顔に書いてあったんだろう。
三橋は俺の顔を見るなりいつものように、いや、いつも以上にキョドり始めた。
その様子はもの凄くうざいけど、もう俺は怒鳴らないって決めたんだ。
俺は三橋を怯えさせないように精一杯の笑顔を作って話しかける。
「何、どうしたの?」
「あ、あの、お見舞い に・・。」
「はあ?!一人で?」
「う うん ご、ごめ・・。」
思わず声を荒げてしまった。
三橋が一人で自分から見舞いに来るとはどういう事だ。
あんなに俺、三橋とどう接したらいいか分からないと思ってたのに。

三橋が。
一人で。
俺を見舞いに来ただと?

藤崎詩織を落とした時よりもある意味うれしい。
俺は変にドキドキしながら、三橋を部屋に招き入れた。