>>437と丑みはに捧げる
mihashianaにずっぽりとはまり大学もバイトも行かずスレにのめりこんでいた。
はっと気がつけば外に出ないまま一年が経過していた。
居留守を繰り返しているうちに少しだけいた友達からの着信がまったくなくなっていた。ケータイ履歴は母親のみ。そのうち親からも連絡がなくなった。
ある日気がついた。俺のケータイはもう半年ばかりしょうもない広告メールしか届いていないことを。
急に暗い将来が脳内に渦巻いた。
このままではいけない社会的に抹殺されてしまう。
外に出る努力をしようと思った。とりあえず夜の外出からはじめることにした。
久しぶりの外気が俺の皮膚をすっと優しく撫でてくれる。甘くて夏の気配を感じた。
夜の街は誰も居なくてのびのびする。俺は安心して歩を進めた。
そんなにたくさん歩いたつもりもないのに、久しぶりに動いたせいかふくらはぎが痛い。つりそうだ。己の身体のなまりっぷりが情けない。だけど何故か清々しい気分だ。ちょうど公園の近くまできた。そこで休憩することにした。
公園の脇にあるコウコウと夜の道路を明るく照らす自販機でお茶を買いベンチに腰をおろした。
ふくらはぎを手の平でトントン叩きながらお茶に口をつける。
「あぁ〜、三橋め」
「は、はい」
溜め息混じりに一人ごちていると公園のトイレの片隅から返事のような声が聞こえた。
誰も居ないと思ったのに。やっばい。
「草木も眠る 丑三つ時だ、よー」
「うわっ!」
誰も居なかったはずの俺の横に誰か座っている。白い三角をつけているこれは。
丑みは! 丑みはじゃないか!
「眠れないとき、は 枕もとにたちます、よー」
丑みはは三橋に似た頼りない面差しでフヒッと笑った。
「え、ええ、え まじで」
「オレで、よかった ら」
丑みははまたニコッと笑う。丑みはの姿がどんどん淡くなり気がついたら夜の闇に消えていた。
公園には俺一人しかいない。
もしかして夢でも見ていたのかなあと思う。
何故俺はもっと気の利いたことを言えなかったのか、とも思った。
だけど寝るのが楽しみになった。ふくらはぎの痛みも忘れ足取りも軽く家に帰った。
おわり