三橋「い、磯野カツオ君!」

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576fusianasan
加害妄想の話

三橋は高校を卒業後、東京の大学に推薦が決まった。埼玉から通うには時間がかかるので
一人暮らしをすることになった。三橋は頼りないところがあるから心配だ。
今日は久しぶりに三橋が群馬に里帰りしてくる。早く三橋といろいろ話したい…
「修ちゃ ん!」
そう思ってる間にも三橋が来たようだ。俺たちは近況や野球のこと、一人暮らしのこと…
いろいろなことを話し合った。だが、三橋は一人暮らしに不安があるらしい。
何でも、引越しをしたいそうだ。
「引越しって何で?今すんでるところ大学からも近いし…もしかして近所に嫌な奴がいるとか?」
「違う、よ…。お、俺…騒音で近所にメーワク、かけてるみたいで…」
理由を詳しく聞いてみると、なんとも突飛な発想をしているようだ。
夜中部活を終えて部屋に帰ると、郵便受けに「単身パック 引越しは○○で!」
というチラシが入っていたそうだ。そのチラシは自分の郵便受けにしか入っておらず、
自分のとこだけに入っている→何か理由がある→引っ越せというメッセージ→騒音で周りに迷惑かけている
引っ越さなければ!という考えに行き着いたらしい。
普通に考えれば、夜中だったから他の住民はすでにそのチラシを取ってしまったと考えるのが普通だ。
さらに言うと三橋は家には寝に帰っているようなものだから騒音なんて出るはずもなし。
俺はなんだか無性に三橋が可哀想になってきてしまった。そのままぐりぐりと頭をなでてやった。
こいつもうちょっと楽に生きられたらいいのにな…。俺は無邪気に笑う三橋を眺めながらそんなことを思った。

一部実話