榛名「なあもう水島ネタやめてくれよ」

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756お兄さんとオレ
「三橋!今日午後練のあと暇だろ!暇だよな!暇だって言えよこいつうう!!」
阿部くんが急に言った。阿部くんは時々気持ち悪いからなんとなくいやなときがある。
「う・・・ひま・・・ちがう」「なんで?」「人と・・・会う・・・約束してる・・・カラ」「誰とだよ!!」
オレが言ったら阿部くんは次々聞いてきた。何かあるのか?
「知り合いの お兄さん だよ」
オレが答えると阿部くんは目をぎゅうと細くして眉毛を寄せて口を尖らせてとにかく変な顔をした。
「怪しいな。どんなヤローだ。俺も見に行く」
「だ ダメだよ!!!」
とっさに大きな声が出てしまう。でもダメなもんはダメなんだ。
そしたらまた阿部くんは「なんで」て。しつこい、な。阿部くんはなんかジンモン・・・ていうのか
オレの気持ちのうら側、みたいなのを考えてくれないというか・・・時々困る。
「とにかく 今日は 無理 です」
真剣さが伝わるように真面目な顔になるようにして言った。阿部くんは「・・・・・・チェ」と言った。
少し背中がゾワゾワした。まあ まあいいや。とにかくちゃんと断ったんだ。
今日オレは知り合いのお兄さん・・・俺さんと会うんだから。

午後の部活が終わって部室で着替えているとあとから来た阿部くんがオレの隣で着替え始めた。
場所があるんだから、もうすこし離れてもいいと思うんだけどな。
「なあ」
シャツを頭に被ったところでまた急に話しかけられてオレは頭の穴がどこにあるのか分からなくなってしまった。
服の中でむぐむぐ言っていると誰かが頭の入り口を引っ張ってくれて、頭が抜けた。
多分阿部くんだ。「あ りがと」ぽそっと呟いて阿部くんの顔を見たら、また眉毛を寄せてヘンな顔をする。
オレは目を合わせたくなくて俯いた。「なあ三橋」それでも阿部くんは声でオレを追いかける。
「今日の夜さ・・・本当は暇なんだろ?」・・・し しつ こい!!オレはビックリして口をあんぐり開けてしまった。
俯いてたから阿部くんは分かってないと思うけど。
昼間今日は用事があるって言ったのに。阿部くんはオレの話を聞いていなかったんだろうか。
オレはどうやって答えるか迷った。きょ きょうは 無視 しちゃおう かな・・・。
こういう風になる時は最近良くあった。阿部くんがちょっとしつこい時。だんまりしてれば諦めてくれることもある。
今日もそれで、い、いいや。「知り合いのお兄さんって誰だよ」「おいってっば」「みーはーしーくーん」「・・・なんか怒ってんの?」
・・・怒ってるわけじゃない。しつこいのが、嫌なダケ。
757お兄さんとオレ:2008/06/12(木) 02:38:05
「今日はダメだって・・・言ったでしょ」
じりじりしちゃってオレは無視するのを諦めた。「阿部くんはうちにきてどうするの」逆に聞いてみる。
「いや・・・だからさ。・・・分かんだろ」わからない。オレはエス・・・エスパー、じゃない。
オレがぶんぶん首を振って答えると、阿部くんはちょっとしょんぼりした顔をして「あ・・・そう」と言って俯いてしまった。
さっきのオレみたいだ。違うのは怒ってるのとしょんぼりしてるところ。それから先阿部くんはもう何も言わなかった。
オレより先に着替え終わってさっさと部室を出て行った。
「三橋〜もう鍵閉めちゃうぞ〜」
「う うん!スグ行く!!」花井くんが呼びにきたので俺は慌てて着替えを終わらせた。荷物をまとめて部室を出ると、入り口の花井くんと目が合った。
「急かして悪ィな。でも今日は早くしねーと怒られっから」
今日は学校全体で大事な会議があるらしくで、部活は早めに終わるようにって言われてる。生徒は残ってちゃイケナイんだ。
「ご・・・ごめんなさい」「ん?ああ・・・いいって!」オレが謝ると花井くんはちょっとびっくりしたように笑った。
「じゃあな〜三橋〜また明日〜〜〜」
いつもと変わらない元気な声で田島くんが手を振る。「ま、また明日ーーーーーー!!!」オレは精一杯叫ぶ。
隣で阿部くんが「また明日ー」とかなんとか言っている。小さい声だから田島君に届いてるかどうかオレは心配になる。
でも田島君はそんなこと気にしないのかな。田島君の背中が遠くなっていく。オレはふうっとため息を吐いた。
次の分かれ道まで阿部くんとふたりだ。他の皆はそれぞれ寄るところがあるとかで、大分前に別れてしまっていた。
自転車を押しながらのろのろ歩く。乗って帰ったほうが早いんだけど、疲れてるからやらない。多分阿部くんも同じと思う。
オレは阿部くんがまた「今日・・・」って言ってきたらどうしようかと内心ビクビクしていた。
でも、もし言ってきたってちゃんと断る んだ。二回も断ったんだから、三回目だって へいき。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なあ」
ほっ ほら きた!!!けど へいきだ!ちゃんと断るんだ!!!
「な・・・に・・・・・」オレはちらっと隣の阿部くんを見た。阿部くんはなんとも言えない顔をしてた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱいいや」
長い沈黙のあと 阿部くんはそう言った。オレはホッとした。よかった。断るのってやっぱり気持ちがつらい。
断る前に話が終わっちゃって良かった。そんで、ほっとしたらなんか勇気が沸いてきちゃって、オレは阿部くんに言った。
「お オレ 先 帰る ね!」阿部くんのほうを見ないで自転車に跨った。まっすぐ。前をみたまま。
「えっ」という声が聞こえたような、聞こえなかったような。オレは走り出した。後ろは振り返らない。
「みは・・・・」「また あした〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
三橋!阿部くんが言い切る前にオレは大声であいさつして、スピードを上げた。まっすぐ。まっすぐ。
俺さんの待ってる家を目指した。

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