畠「堕ろせよ」

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441死にネタ注意
三橋が死んだ。
まだ16才だった。
通夜も葬式も終わったけど、まだ俺は信じられなかった。
瞼の裏にはアイツがマウンドに立って振りかぶってる姿が焼き付いている。
つい昨日の事だった。
ちょっとだけ球速が上がったって一緒に喜んでたのに、三橋は死んでしまった。
「バッカじゃねーの。九分割身につけるのにどれだけ苦労したんだよ。
あっさり死んじまったら、なんの役にも立たねーだろ。」
俺は火葬場で、変わり果てた三橋の骨を見て、無力感に苛まれながらそう呟いた。
遺族達が泣きながら箸で三橋の骨を骨壺に移していく。
おばさんは箸も持てずに泣き崩れていて、それをおじさんが支えていた。
俺はそれを実感が湧かないままボーッと眺めていたが、不意に手を伸ばし、
誰にも気付かれないように三橋の骨のカケラを一つ取り、ポケットに忍ばせた。
マウンドに埋めてやろう。三橋が大好きで譲れなかったマウンドに。

さすがにその日の練習は休みで、みんなそれぞれ暗い顔をして家に帰って行った。
当たり前だ。昨日までいつも一緒にプレイしていた仲間が死んだんだから。
俺は一人帰らず、誰もいない夜のグラウンドに残り、ポケットに入っていた三橋の骨を、マウンドの下に埋めた。
その上に丁寧に土をかけて元通りにした後、少しだけ泣いた。

その夜。俺は人生で初めて金縛りを体験した。