シュン「オレ好きなカンジだよ」

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「阿部くん……どうし、よう」
受話器から聞こえた三橋の声は、酷く震えていた。
おどおどしているのはいつものことだったが、オレはむしょうに嫌な予感がした。
「ど、どうした!?何かあったのか!?」
「オレ、オレっ……」
「今から行く。どこにいんだ!?」
「俺くんの、家……」
俺くんって、確か三橋と同じクラスの奴だったな。
三橋に異常なくらいベタベタしてて、三橋もまんざら嫌そうでもなくて。
クソッ。なんだかイライラする。
「家の場所教えろ。電話切るなよ」
「う、うん……」
オレは家を飛び出した。
三橋のたどたどしい説明を頼りに、なんとか俺とかいう奴の家に辿り着く。
無礼ながら玄関のドアを開ける。
「三橋、いるか?」
「あ、阿部くん」
呼びかけると、奥の部屋から三橋が静かに顔を出した。
「阿部くん、オレ……」
「落ち着け三橋。何があったんだ?」
オレが尋ねると、三橋は俯いて部屋に戻っていった。
不審に思いながら、オレは靴を脱いで家に上がった。
家は静かで、オレと三橋以外の生気を感じなかった。