三橋「こ、高野菜って おいしいの?」

このエントリーをはてなブックマークに追加
409どうしようもなく好き
あいかわらず病みシュン注意  苦手な俺はスルー推奨

あらすじ・結婚式当日の三橋を拉致って監禁。ぶちこんだ挙句に三橋の結婚相手の阿部に写メ送信。


兄ちゃんにメールを送れば、速攻電話がかかってきた。メールで送ったんだからメールで返せばいいのに。あいかわらずせっかちだよな。無視しよっかとも思ったけど、言いたいこともあったし通話ボタンを押した。
瞬間、鼓膜に響いた怒声。
「シュン、てめぇふざけんな。三橋はドコだ!」
あぁうるさい。そんな怒鳴らなくても聞こえてるし。受話器を突き抜けるような大声に、俺の傍で気絶している三橋さんが起きるんじゃないかと視線を向ければ、まだぐったりと横たわったままだった。
まぁ、縛ってあるから目が覚めても動けないだろうけど、でも三橋さんに兄ちゃんの声を聞かせたくなかった。
だって、これからも二人で過ごすのに兄ちゃんの声なんか聞かせて変に希望なんか持たれたくない。兄ちゃんのコトなんか考えさせたくない。三橋さんから、兄ちゃんの存在を消してしまいたいんだ。
「三橋さんはここにいるよ。ずっと俺のそばにいるんだ。もう兄ちゃんの三橋さんはいないよ」
「バッカ言ってんじゃねぇよ。とにかく早く三橋を返せ。お前、自分が何やってんのか判ってんのか!?」
…判ってるよ。
「三橋の親も心配してるんだ、バカなこと止めてさっさと三橋を返せ」
みはし。三橋三橋三橋三橋三橋三橋三橋。
三橋さんが自分の所有物みたいな言い方をする兄ちゃんに、カチンときた。今の状況判ってんのかな。判んないだろうな。頭に血が上ってるのがありありと判るし。血管切れるよ兄ちゃん。
「…ぅ…あ、たか、や、くん…?」
足元で、もぞりとウェディングドレスの布が波打った。あーあ、聞こえちゃったのかな。兄ちゃんがうるさいから、三橋さんの目が覚めちゃったじゃないか。っていうか、隆也くんって呼ぶの?兄ちゃんのこと。
たかやくん。隆也くん隆也くん隆也くん隆也くん。
面白くない。
受話器からまだ兄ちゃんの怒声が聞こえてくる。段々意識のはっきりしてきた三橋さんは、兄ちゃんの声に気づいたんだろう。俺に啼かされてかすれた声で、起き上がれない体をひきずるように、上体を起こしながらそれでも。
「隆也くん!」
と、一言叫んだ。それに呼応するみたいに
「廉!」
と兄ちゃんの声。
何これ。本当に面白くない。三橋さんはもう兄ちゃんの白い三橋さんじゃないのに、わざわざそれを教えるために写メ送って電話にだって出てあげたのに。何で二人で名前なんか呼びあっちゃってるわけ?
互いを心配して声を掛け合う三橋さんと兄ちゃん。
そんなに声が兄ちゃんの声が聞きたいなら、聞かせてあげるよ、三橋さん。