三橋「いいことあっるぞー」

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80中華まんおっぱい
>>68<!一行あけてね>
 結局、試合はおろか練習中もブラジャーをつけることは許されなかった。
「ふたりが真剣なのはわかったよ。だけど許可するわけにはいかない」
考え込んでいたモモカンは少ししてから阿部君とオレを真っ直ぐ見つめ宣告した。
何か言いかけた阿部君に「少しいいかい?」アイちゃんを抱いた志賀先生が片手をあげ遮った。
「君達が確固とした信念をもってやっているのだとしても世間はそう思わないんだよ」
 諭すようなこの一言がつまりは極めつけの一撃だった。
「阿部と三橋だけじゃない。西浦全員が奇異な目で見られることになる」
返す言葉がない。何て言ったらいいかわからなくて阿部君を見ると怒ったような顔をして口を結んでいた。
「今日はもういい。午後の練習も出なくていい。頭を冷やして考えなさい」

部室に戻っても阿部君は無言だった。無言でオレに背を向けてシャツに着替えている。
阿部君の背中を見ていたら悲しくなってきた。
オレがちゃんと集中して投球できてたら気付かれなかったかもしれない。気付かれてもオレの調子が良かったりしたら必要ないだとかそんな風には言われなかったかもしれない。むしろブラジャーが正式なユニフォームになったかもしれないんだ。
オレがヘボピだから阿部君にもブラジャーにも迷惑をかけてしまった。自分が情けなかった。
「ごめ、ごめん ね オレがうまく投げれてたら」
「バッカ! お前のせいじゃねーよ!」
振り返った阿部君の大きな声に驚いていると阿部君の指がオレの顔に近づいた。
「…泣くなよ、オレこそごめんな」
涙がでていたようだ。
阿部君の節ばった親指がオレのまぶたを滑っていく。
「お前が投げづらくなんのも。変な目で見られるのもわかってたんだ。三橋にばっかり負担かけてオレのワガママに付きあわせてごめんな」
阿部君がオレに向かって頭を下げている。
阿部君が喜んでくれるのがオレは本当に嬉しかったんだ。全然負担とかそういうんじゃない。
違う。違うよ。そうじゃない。全然違うんだ、阿部君。
「あ、あべくん、あべくん、ぜんぜん、ぜん ぜん オレ はっ」
はじめて阿部君と会ったときのこととか西浦にいてすごく嬉しかったこととか、感情がぐるぐる巡ってこみ上げてきた。きちんと話そうと思うのに涙と鼻水があふれて息が苦しい。
思っていることの半分もオレは言えない。
阿部君のおでこがオレのおでこにこつんと当たる。ぐしっと鼻をすする音が間近で聞こえる。
「ごめん、ありがとう。三橋」
阿部君も泣いていた。泣きながら笑っていた。
<おやすみはし。かけたらまたくる>