叶「廉、今、幸せか?」

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125廉、今、幸せか?
電話の向こう側から聞こえてくる声は少し前練習試合をした時に聞いた声よりもまだ小学生ぐらいの頃のトーンに近かった。
埼玉での生活はどうだの向こうのチームはどうだの球をとってくれる捕手はどうだの、
主に野球の話題を中心に会話が盛り上がってふと気付いた頃にはもう一時間ほどが経過していた。
「廉、明日も早いんじゃないのか?」
「う、うん、修ちゃんも明日早い、よね」
「だな、じゃあもうそろそろ寝ようぜ」
「あっ、ご、ごめんね、オ、オレ久しぶりだったから、なんかいっぱい……」
「いや、いーよオレも久々にたくさん話せて嬉しかったしな」
「う、ひっ」
「なあ、廉」
「な、なあに、修ちゃん」
「廉、今、幸せか?」
「す、すっごく幸せ、だよっ、毎日、お尻の穴にちんちんもらえるんだ っ!」
「え?」
「じゃ、じゃあおやすみっ!」
聞き返した言葉は廉の耳には届かなかったのかもしれない。
もしかしたらさっきの数秒間だけこの電話の向こう側は別の空間に繋がってたんじゃないか。
そうとても思わなければ明らかにおかしい廉の発言を最後に、手に握った携帯電話からは通話の切れた音しか響かなくなった。