玄関先に置いた椅子に腰掛けると鈴生りの白い小さな花が俺と三橋を見下ろす。
盛りを過ぎた躑躅、あでやかに華を競うアマリリス、地を這い色を添える数種の芝桜。
門の両脇に植えた金柑が熟した実をぽとぽとと落とし、それを目当てに鳥たちもやってくる。
「蚊がいるね」
ぺちりと脛を叩いて三橋が呟く。
吸われた後だった。白い肌に小さく赤い点が滲んでいた。
俺は立ち上がると、水盆の脇に茂る蚊遣り草を千切り足で踏みつける。
途端に、夏の記憶と結びつく、嗅ぎ慣れた蚊取り線香の匂いがたつ。
綿麻のシャツの袖をくいと引っ張って、三橋の声が、ありがとう、と優しく俺の耳に吹き込まれた。
庭を見るたびにこんな妄想ができる俺は幸せです
寝る寝るおやすみはしハハハ