三橋「ハグハグ」

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446影法師
>>415>>429>>436   ※鬱注意   ここまで

「…俺はどうしたらいいんでしょうか…?」
「普通でいいと思うよ。三橋君が投球のことで悩んでいるのを忘れないでいてくれれば、
 それで十分。阿部君なら無理させるようなこともしないと思うし。それに私が今言った
 ことだって、これからどう変わっていくかわからないことも覚えておいて」
「…はい」
「阿部君がそんなに驚くとは意外だったわ。とっくに気が付いてると思ってた」
監督は暗に俺が客観視できなくなっていることを指摘した。
言われちまったなぁと凹みながら監督を窺うと、話は終わったようで椅子から立ち上がっ
て俺に手を差し出した。
「部室の鍵もらえる?志賀先生のところに寄って行くから私が返しておくね」
「あ、すみません。お願いします」
施錠し外に出ると寒さが身に沁みた。
「じゃあ、気を付けて帰るんだよ」
「はい、監督も」
きびきびと校舎に向かう監督の後ろ姿を見ながら、本当はもっと違う話をしたかったんじ
ゃないかとふと思った。
…例えばあのこととか。
── 俺と三橋は隠れてセックスしてます。
もしそう言ったところで、あの監督ならそれほど動じないような気がするのは俺の買い被
りだろうか。
明日からはもう少し三橋の投球を注意して見てみよう。
そんなことを考えながら家を目指して自転車を漕いだ。