三橋「ハグハグ」

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107無人島
 目を開けた瞬間真っ先に感じたのは太陽の眩しさだった。突き刺さるような太陽の熱が、開いた目だ
けじゃなくて体全体にじわじわ広がっていく。体を起こそうとしてみて、酷く重く感じることに気付いた。
纏わりつく砂の感触に、真っ先にここはどこだろうと疑問を覚える。周囲を見渡して頭で理解するより
先に声が出た。でもなぜだか皺枯れていて、いつもとは全然違う声になっている。
「三橋!」
 真っ先に気付いたのは見慣れた色の頭が数メートルも離れていないところに埋もれているということ
だった。駆け寄ろうと足を動かすとバランスが崩れて、そのまま縺れて倒れそうになる。足の下は砂
浜だ。よく見るとすぐそこが波打ち際になっていて、服は半乾きの状態になっている。ところどころに
泥や砂がついていてとにかくどこを見てもぼろぼろだった。
「三橋……」
 この状況の中なにをすればいいのか。冷静な判断で体を動かせるほどオレの頭は冴えていなかった。
とにかく駆け寄らなければと縺れそうになる足で踏ん張ってみるものの、なぜか軸になる部分が痙攣し
たように力が入らないし、一歩踏み出そうとすると砂に捕らわれる。ぶっ続けで練習を続けて、さらにそ
の後休憩もせずに無茶に走り回った時みたいな疲労感が体全体にあった。
「おい、三橋」
 結局オレは三橋の手前あたりで力尽きてそのまま砂浜に倒れこんだ。砂はざらざらとしていて剥き出
しの肌の部分に触れると熱かった。真上から突き刺すような太陽の光のせいか、それともぼろぼろの体
を無理やり動かしたせいなのか、額から汗が眉間を伝って零れ落ちてきて、目に汗が染みる。何度か
瞬きをしてそれを振り払ったあと三橋を抱き起こした。格好はオレとそう変わらない。半乾きの汚れた服に、
頬には砂が張り付いていた。それを払ってやりながら何度か肩を揺する。最初のうちは全く反応がなくて、
まさかとは思いつつも胸のあたりに手をあてたら動いていることだけはなんとなくわかった。しつこく揺さ
ぶりをかけ続けるとようやく三橋が反応を見せる。
「あ、あ……」
 薄く目を開いてからすぐに三橋はさっと片手でひさしを作った。目覚めたばかりで開いた視界にあの陽
射しは確かにきついだろう。影になるように真上から顔を覗き込んでやれば三橋はふるふると軽く頭を
揺らして、ゆっくりと瞼に被せていた手を退けた。
「あ、れ……」
「大丈夫か、三橋」
 なぜか三橋の無事を確認した途端ほっとしている自分がいた。それだけで一気に体が楽になるなんて
ことはなかったけど、頭の中の重みはこれで軽くなったような気がする。
 三橋と目を合わせて軽く頷いてからがしがしと頭を軽くかいた。まずここはどこだ。オレ達はなんでこん
なとこにいるんだ。目が覚める直前、最後の記憶、あれは確か飛行機の中だった。