「私リカちゃん、今ケーキ屋さんの前にいるの」
「え……だ、誰?」
俺と三橋は商店街にいた。
別々に来ていたのだが、三橋の姿を見つけ、ちょっと悪戯してやろうと非通知で電話をかけた。
三橋は俺からの電話を、ビクつきながら聞いていた。
俺のことにはまだ気付いていないようだ。
電話が切れると、不思議そうな顔をして三橋はまた歩き始める。
俺はもう一度三橋に電話をかけた。
「私リカちゃん、今文具屋さんの前にいるの」
「オレがさっき、前を、通ったお店……誰!?」
すぐに電話を切る。
キョロキョロしだしたので俺は急いで店に入って身を隠した。
文具屋の前まで戻ってきた。
顔を真っ青してる。
可哀想になってきたからそろそろバラしてやるか。
店を出て、気付かれないように三橋に近付く。
「三橋」
「ひぎゃあああああ!」
肩を叩くと色気のない声で叫んだ。
「俺だよ俺。ごめんごめん驚かせて」
「お、俺くん……うっうっ」
「さっきの電話も俺だよ。怖がらせてごめんね」
「ばかぁ……すごく、怖かった、よぉ」
三橋は涙目で俺に抱き付いてくる。
怖がらせて悪かったと頭をぽんぽん叩いてやると、空気を読まず俺の携帯が鳴った。
「ったく、いいふいんきだったのに……もしもし?」
「私リカちゃん、今あなたの後ろにいるの」