202 :
fusianasan:
今時は搾乳機を使うのかとも思ったが見学とか体験とかでも収入を得ているらしく基本ここでは手絞りらしい。
垂れ下がったピンク色の牛の乳をおじさんの手が独特の手つきでぎゅっぎゅっとする度に、
ぴゅーと白い液体が落ちてきてその下に置かれた容器にどんどん溜まっていく。
言葉にしてみると結構えろい気もするけど所詮は牛だ。
三橋の乳搾りならともかくただの牛の乳搾り、やっぱ飽きた。
「あ、もう終わり、かな」
だいたい三十分くらい眺めていたような気もするけど、おじさんが片付けを始めたのでとりあえずは終わりらしい。
終わり、ってことはそうだ、午後からはおじさんが車で街まで連れてってくれるつってたな。
旅行前に雑誌やらで見た北海道のうまそうな食いもんの数々を思い出して腹が鳴る。
オレの腹の音につられるようにして三橋の腹からもぎゅるぎゅると虫の音が聞こえた。
思わず二人して顔を見合わせる。
「ふひっ……」
「はは……」
赤かった顔の名残を残したままの三橋の笑いと、苦笑いが半分混じったオレの笑い。
街中までいけば、そのうちこの差も埋まってくれるだろう。
予定から大きく外れたつってもオレだって一応この旅行楽しみにしてたわけだしな。
それに夜はペンションで、本当の本当に二人っきりだ。
朝一番に泊まる予定のペンションを見せてもらったけど、すげーでかいの。
おまけに一番近い建物までさえ車で行かなきゃなんないような距離がある。
こればっかりは北海道のでかさに感謝せざるを得ないオレだった。