三橋「あべくんそうにゅうしてください」

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698あべくんそうにゅうしてください
朝の練習の時に姿を見かけなくてあれって思ったのが最初だった。
いつもだったらオレより先にきてるから今日は寝坊したのかなって。
でも他のみんながどんどんやってきても阿部君の姿はどこにもなくて、
不安になって花井君に聞いてみたら「モモカンから今日は阿部休みだって聞いた」って教えてもらえた。
休み、風邪かな、でも昨日一緒に帰った時は元気そうだった。
朝練だけじゃなくて学校も休みなのかなと思って、昼休みに七組を覗いてみる。
やっぱり阿部君の姿はなくてがっくりしていると花井君と水谷君が声をかけてきてくれた。
「阿部が風邪ひくなんて珍しいねー」とか「いっつも散々三橋に言ってんのにな」とか。
多分オレが目に見えて落ち込んでいたから気を使ってくれたんだろうと思う。
会話もそこそこに九組の教室に切り上げて、自分の席に座った。
バッグの中から携帯を取り出して、阿部君のメールアドレスを開く。
でもなんて書いたらいいのかわからなくて、結局メールはできなかった。
そのうちジュースを買いに行ってた田島君たちが戻ってきたから、メールは諦めた。
メールはできなかったけど放課後練習が終わったらお見舞いに行ってもいいかな。
練習終わってからだったら時間はきっと遅くなっちゃうだろうから迷惑かな。
でも、オレたち恋人同士なんだからそういうの、してもいいんだよね。
阿部君はしたいことなんでもしていいって言ってくれた。
キスだって、えっちだってしてくれたし、気持ちいいことはなんだっていっぱいしてやるって言ってくれた。
不安だったらいくらでも言葉にしてやるし、だからお前もこれからはそうしろって。
風邪をひいた阿部君のことが心配で、不安だった。
阿部君が大丈夫だって言ってくれたらげんきんなオレはきっとすぐに安心してしまう。
会いたい、阿部君に会いたい。

放課後の練習はいつも通りに行われた。
ちょっとでも早く着替えて阿部君の家に向かおうと思っていたのに手がもつれてうまくボタンが外せない。
どうしよう、と焦っているうちに部室の扉ががちゃりと開いた。
「あれ、阿部どうしたの」
真っ先に声をかけたのは栄口君だった。