三橋「あべくんそうにゅうしてください」

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684fusianasan
三橋缶
もしかして被ってたらすまん。世にも奇妙なパロ

アパートの隣りに住む男がおかしい。ボサボサ頭でいい年のどう見ても冴えないおっさんなのに廊下ですれ違うたび違う美女を連れているのだ。こんなボロアパートに住んでいるのだから金持ちというわけではないだろう。
とっかえひっかえできるようなスペックがあるとは思えない。
だがそれも俺の偏見で一見冴えないおっさんは、俺にはわからぬ美女だけに通じるフェロモンがあるのかもしれない。
そう無理矢理納得しようと思ったのも束の間、やはりおっさんには何かがある。おっさんの不思議さを確固とするような出来事があった。
ある朝のことだ。一緒に住んでいる俺の彼女(ありていに言えば俺はヒモの立場だ)の出勤を見送ろうと玄関のドアを開けたときだ。
おっさんの部屋からぞろぞろぞろぞろぞろ……と美女の集団が出てきたのだ。20人、いやもっとか。ともかくたくさん。こんな狭いアパートにどう考えたってそんな人数が入るわけがない。こんなのありえない。
夢でも見ているのだろうかと思ったのだけれど果たしてそれは現実で、美女集団が過ぎ去るのをぽかんと口を開けて見ていた彼女も「じゃ、じゃあ私会社遅れるから」足早にアパートの階段を降りていった。

それからしばらくたったある日。彼女が出張で出かけていった日のことだった。おっさんがゴミ袋いっぱいに空き缶を持ってゴミ捨て場に行くのを目撃した。あの日以来、不思議なおっさんの動向が気になっていた俺はおっさんが帰った後捨てた空き缶を見に行った。
缶は全部同じ缶でパッケージには『美女缶』と記されていた。
「美女缶……?」
大人の玩具の類いだろうか? 聞いたこともないぞ。
空き缶の中に一缶だけ未開封の缶があった。どうやら間違って捨ててしまったらしい。
周りに注意しながらその一缶をこっそり部屋に持ち帰った。