三橋「まだギリギリ お 俺の誕生日!!」

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71わかおかみはし
朝餉の後に気分転換という口実がてら散歩に出かける。
締め切りは20日で、今日はもう17日なのだ。
話はあらかた書き終わっている。
そこから先、どうしても最後の部分が納得いかないわけで。
今まで書いた様なものに挑戦しようと思ったこと事態がもしかしたら誤っていたのかもしれない。
しかし、構想の段階で編集者からは相当面白いと言われているし、実際これまで出した原稿も編集部で相当評判が良かった。
またとない機会なのだ。
どうにかしてうまいこと話をまとめなければ。
そう思い宿の右手を通る川原を歩いていたとき、向こうから若女将がひょこひょこと歩いてくるのが見えた。
なにやらとても大きな荷物を抱えている。なにごとだろうか。
「・・・女将さん。こんにちは。今日の朝餉も大変美味しかったですよ」
思わず、声をかけてしまった。
女将は相変わらずのようで、こちらには全く気がついてなかったらしい。
荷物を落としそうになり、慌てて持ち直した。
「せ、先生・・・おはよう、ございます」
牡丹のように顔を赤くした若女将がふひ、と笑いかけた。
この若女将独特の笑いだ。
他愛のない天気の話などをし、俺が締め切り前に散歩をしているという話題になる。
「そうなんですよ、20日が締め切りで・・・今日はもう17日じゃないですか」
とたんに女将の顔が変わった。
なにかに驚いたかのような、そんな表情だ。