三橋「まだギリギリ お 俺の誕生日!!」

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みは誕間に合いませんでした…。四畳半2と3の間

天気予報で降水確率80%だとしても、出かけるときに雨降りじゃないならオレは傘を持
たずに行くことが多い。
そんな行き当たりばったりな性格なので、下宿の玄関に置いてある傘立てにはオレが持ち
帰った壊れたビニール傘が何本も入っている。
なぜそんなものを持ってくるのかというと、オレはできるだけ生活費を切り詰めなければ
ならないのだが、雨に遭遇しても傘を買う余裕がなく駅や道端で誰かが捨てていった傘を
拾ってしのいでいるからだ。
雨に降られて困るのはオレだし、みっともないからやめなければならないこともわかって
いるのだが、なぜかこの悪い癖は直らない。
ここに来た頃はお母さんの持たせてくれた傘が2本あったんだけど、すぐに置き引きされ
てしまった。
最近では大家さんも慣れてしまって、ある程度の数がたまると捨てるようになった。
「自由に使っていいから」とわざわざ持ってきてくれた傘は、なくしたら申し訳ないので
一度も持って出たことはない。
そうして、壊れた傘がまたたまっていく。

隣の部屋の阿部君は空模様を見て、自分が降りそうだと思ったら傘を持って行く。
何か独自の方法があるのか、天気予報の降水確率が低いにもかかわらず雨が降ったような
ときは、阿部君予報の方がはるかに当たることが多い。
不思議に思って阿部君に聞いたら、前に膝をちょっと怪我してから天気の変わり目がわか
るようになったのだと教えてくれた。
阿部君は一本の傘を大事に使っている。
オレも見習いたいと思いつつ、やっぱり傘を持たないで出てきてしまった。
降りそうだなと思いながら予備校の授業中窓の外をちらちら見ていたら、終わり頃にはぽ
つぽつ雨粒が落ちてきて次第に本降りになってきた。
濡れながら走って電車に乗り、駅に着いたら雨が止んでないかと期待したけどだめだった。
今日に限って捨てられた傘も見当たらない。
コンビニまでなんとかたどり着いてぼんやり雨宿りしていたら、見覚えのある傘が視界に
あらわれた。