気付いたらオレは、白黒の世界にいた。
「だ、誰かいません、かー」
呼びかけてみても、返事はない。
ただ、オレの声が反響してる。
不気味だ。
これは夢なんだろうか。
オレ、こんな夢見たことない。
いつも、野球やってたり、阿部君に怒られたり、美味いもの食べる夢なのに。
「変な、夢、だ」
白と、黒い線。
黒い線はまるで墨のようで、絵の中にいるみたいだった。
わけもわからず、ぼーっとしてると、風が巻き起こった。
何が降りてくる。
そう思った時には、目の前に誰かがいた。
(鼻が、ながい……)
オレよりも大きな体の、白黒の姿をした男だと……思う。
とにかく身長と鼻が長くて、でっかい人だった。
「だれ、です、か……?」
訊いても、答えてくれない。
黙ったまま見つめ合ってると、長い鼻がゆっくりと近寄ってきた。