タイトルうろ覚えだが多分これ
「夜の阿部君はやさしいんだ」から派生しました
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朝の練習でグラウンドに行くと、もう何人か着替えている。
オレも急いでベンチのとこで着替える。
勢い良くシャツを脱いでから、自分のハダカの上半身をちょっと見てみる。
何にも、ない。
昨夜あれだけ阿部君にキスしてもらったのに、痕ひとつ残っていない。
阿部君はやさしいから、オレが困らないように気を使ってくれてるんだ。
それがちょっと寂しいって思っていたら、阿部君が来た。
いつもよりちょっと遅いから心配してたけど、グラウンドに入る前に大きな声で挨拶してて、
今日も元気なんだって安心する。
オレからちょっと離れたところで着替え始めるから
本当は近くに寄ってって話しかけたいって思う。
でも阿部君は必要以上に人前でベタベタするのはよくないって思ってるみたいで
練習中は必要なことしか話さない。
だからオレも何も言わないように我慢する。
だけど、阿部君の腕に蚊がとまったとき、思わず「阿部君」って言って、手が出ちゃった。
ペチンって叩こうと思ったけどその勇気はなくて、追い払うだけだったけど、
阿部君にはすごい顔で睨まれた。
何にも言わずに行ってしまった阿部君の後姿を見ながら、ちょっと哀しくなった。