田島「俺の言うこと聞けねーんだ?」

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892きみはペット
前回分わからない
あらすじ 三橋が阿部を捨てて中村のところに転がり込みました 以下中村のターン


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足早に会社をあとにする。
駅から少し離れた公園の手前のベンチ。
ここがいつも、俺達が落ち合う場所。
「な、中村君っ」
「ごめん、待った?」
俺の姿を見つけるや否や、すっくと立ち上がりぱたぱたとこちらに駆けてくる。かわいい。
「オレも、今きた、とこ」
「そっか、よかった」
指を絡ませると少し顔を赤くしてキュッと握り返してきた。
「今日はどうする?」
「え、と…」
「ホテル行く?俺んちにする?」
耳元に口を寄せて囁く。
逃げる目線を追いながら肩を引き寄せると、可哀想なくらい真っ赤な顔で俯いてしまった。
「な、なか、中村君、ち…」
蚊の鳴くような声で袖を引いて、それが煽ってるんじゃないとして、一体何なんだ。
それにまんまと乗せられている自分も滑稽だ。
こいつに出会うまで、俺はいたって普通のリーマンだった。
普通に働き、普通に生き、普通にいつか出来るであろう愛する妻と子との幸せな家庭を夢見ていたりしていた。
それがどうだ。
今は自分とさして変わらない体格の男にチンコを勃て、突っ込み、惚れ込んでいる。
自分をペットにしてくれと懇願してきた男は今や、俺の中では恋人に近しい存在にまでなっていた。
何がそうさせるのかわからない。
けれどもう、こいつを手離したくはない。俺だけのものにしたい。
そんな子供染みた独占欲さえ抱きはじめていた。