田島「俺の言うこと聞けねーんだ?」

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357太陽の黄金の林檎
流されやすい俺も大きくフライング誕生日
※スカトロ注意のスイーツ(笑)

5月17日は三橋自身にとっては一年に一度の記念日だが、おおかたの人々にとってはなんでもない日である。
なんでもない日おめでとう。
おれにとってもなんでもない日だった5月17日がとんでもない一大イベントのようにその年は思えた。
なんでもない日、春大も終了して部員それぞれの小目標への道のりが明確に見えてきたそんなころ。
当日はどうするのかと本人にたずねたら、群馬の本家で宴席が設けられるからどうたらといつもの調子で言い訳がましいことをほざく。
それは何に対する言い訳なんだ、自分の行動にくらい責任を持て、と正したら、「それ、は、そうだ ケド」となおさら言いよどむ。
なんなんだよ。
三橋はムニムニと口元をグラつかせ、目玉をあちこちに泳がせてから結局おれを見上げた。
「お祝い、してもらえるのは嬉しいけど、その、もうあんまりあっち行ってないから、久しぶりにみんなに会うのも嬉しいんだ、けど」
「行くの嫌?」
三橋はフルフルと首を振って否定する。
「そ じゃなくって、でもね」
「うん」
「阿部君、オレのこと今、予定聞いただけで誘ってくれたワケじゃない」
いや、この後誘うつもりでいんだが。おれが口を開いたところで、三橋は両手を前につっぱった。
「で、でも、誘われてもオレ、それ、断ることになる のは、その、比べたとかじゃなくって…………そ の」
汗をダラダラ垂らしながら珍しく冗長に三橋は話し続ける。
「その、オレの誕生日だけど、オレがホントにいたいとこにいるのって、むず かしい……」
それでおれは三橋のぽさぽさの頭に手を置いた。
手をかき混ぜて温かい頭蓋骨をなでると、表情筋の未発達な動物のように三橋のほっぺたがふくらんでとても素朴な笑顔の形を作るのだった。