三橋「フヒヒwwwwwサーセンwwww」

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20合宿中の出来事
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前回のあらすじ「こんや みはしになにかが おきる」→三橋パンツ事件解決→副キャプテンがフリスク係り
<ここから>

柱に括り付けられうなだれる三橋が窓から差し込む月光を受けて青白く光っている。
自ら言い出したくせに目蓋には大粒の涙がぷくりと浮かび雫をぽたぽたと落としている。
涙の粒を足で伸ばし畳にヒヨコを描いている三橋は、これ何て雪舟?などと軽はずみに声をかけられないくらい何だかシリアスだった。

「オレを 動けない、よーに 縛って 下さい」

三橋が「あの…」と遠慮がちに声をかけてきたのは夕食の片付けが終わり部屋に戻ろうとしたときだ。キャプテンは監督と顧問に呼ばれ席を外しており、もうひとりの副キャプテンはミットの手入れがあるとかで先に部屋に戻っていたのでその場にはオレと三橋しかいなかった。
件の一言を三橋が切り出したときもソラミミの類いだろうと耳を疑ったものだ。
「えーと、あの、三橋」
言いかけたオレにキッパリと三橋は繰り返した。
「オ、オレを 縛って 下さい」
メモ、あった、でしょ? オレ だから、ポカン顔のオレに向けて弁解らしき言葉を紡ぐ三橋なのだが、だからメモと三橋を縛るのとどのような因果があるのか誰か教えて下さい。
それから三橋の説明が小一時間ほど続いた。オレはそんなことよりも早く部屋に帰ってPSPに入れてきたゲームの続きがしたかったのだけど、とにかく三橋はやたらに真剣で適当に切り上げることができなかった。
三橋の説明をかいつまむと、「こんや みはしは へんか する」らしい。
「へんか」というのはつまりは「変化」で「変身」で「変体」で「メタモルフォーゼ☆」であるらしい。
「こんや みはしに なにかが おこる」その「なにか」がそういうことだと言う。
メモを寄越したのは誰だかわからないけれど自分の内部で何かがはじまると何故だかぴんときたそうだ。
そして「変身」のときにおそらく暴れるだろうから皆に危害が及ばないようにきっちりと縛って欲しいそうなのだ。
切羽詰った熱っぽい瞳で必死で話す三橋を「まさかあ」と突き放すことが、それがあまりに突飛ゆえにできなかった。むしろ下らないメモ一枚でそこまで追い込まれている三橋が気の毒に思えた。
だからオレは全然信じてはいなかったのだけど三橋の言うことに逆らうことができなかった。
何にしろオレひとりでは荷が重く他の部員にも知らせようと「とにかくさ、みんなにも」と腰をあげるもさっき迷惑をかけたからこれ以上騒がせたくないと頑なに拒まれそして現在に至る。