三橋「えと これがりばーすれっぐれいずだ」

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230大学生日記
十一月三日 曇り
念願の車を手に入れたぞ!父さん母さん有難う。
ホンダのフィットだ。色は黒にした。大家さんに駐車場を借りる申請をして
おいた。これでちょっと遠くのスーパーにも気軽に買い物しに行ける。
ここら辺は車が無いと本当に不便だ。最近本当に寒かったから有り難い。
ちょっとボーっとするのでもう寝ることにする。
そういや上の奴は彼女と結構長いみたいだな。頻繁に会ってるしヤってる。
ただ俺ちょっと頭痛いから静かにしてくれよと思った。
両足の小指、箪笥のカドにぶつけて骨折にな〜あれ


十一月四日 たぶん晴れ
風邪をひいた。久しぶりだからしんどい。最近寒かったのもあったけど、寒
くてたまらなかったのは風邪の引き始めだったようだ。迂闊だった。
代返を北野と山田に頼み、学校を休んでひたすら寝ていた。
朝と昼は自分で粥を作って食べた。夜には大分熱も下がったが、ちゃんとし
た飯を作る気力がなかったのでご飯に味噌汁、納豆で済ませた。納豆ご飯っ
て久しぶりに食べると超うめえ。
夜中上の階でなんか長い間ボソボソ喋り声が聞こえた。内容はいつもどおり
さっぱり判らないのだが、たまに声が荒くなったりするのが分かる。しばら
くそれが続いていたらいきなり声がでかくなって、なんかがぶつかる音の後
にバタバタ走る音がして、上の階人のどちらかが部屋を飛び出したようだっ
た。
一瞬追いかけようかとも思ったが、俺は無関係の人だし、何よりもしんどか
ったからそのまま眠りに付いた。ただ少し三橋さんが気になった。
231大学生日記:2008/04/22(火) 01:45:32
十一月八日 曇り
今日は事件があった。今思い出してもゾッとする。
夜夕飯の片づけをしていると上からドガッというでかい音が何度もした。
怒鳴り声や泣き声まで聞こえるし、今までよりやばそうな感じがしたか
ら思わずドアを開けて上の階を見上げた。
そうしているうちに隣のおばさんも異変を感じたのか顔を出してきたの
で、二人でおろおろしていた。美奈子ちゃんが怯えいて可哀想だった。
ひときわでかい音が響いた後、ドアをバンって開ける音がして誰かが階
段を駆け下りてきた。駆け下りてきた人は三橋さんだった。鼻血で顔の
下半分が真っ赤に染まっていた。
余りにも不穏な感じがしたので、おばさんと二人で俺の部屋に匿った。
三橋さんは裸足だった。
おばさんと相談して大家さんに連絡を取る事にした。警察にも連絡しよ
うと言っていると三橋さんが必死になって止めてきたので、迷いつつも
大家さんにだけ連絡しておいた。
おばさんがいったん心配だから美奈子ちゃんのところに戻るといったの
で、部屋に戻っている間に三橋さんを着替えさせる事にした。鼻血がシ
ャツに大量に染みていたからこれはもう落ちないだろうなと思っていた。
だが、三橋さんは何故か着替えるのを嫌がった。俺も動揺していたのか、
全く三橋さんの話を聞かずにやや強引に上着を剥ぎ取っていった。
そうしている間にも上から何かを叩きつけるような音が何度もして、そ
の度に俺と三橋さんは震え上がっていた。
シャツの下はアザだらけだった。絶句しながらも血をふき取って俺のシ
ャツを着せた。怖くてたまらなかった。
そうこうしているうちに大家さんとおばさんが来たので曖昧ながらも何
故か俺が事情を説明した。三橋さんは事情を聞きたいし部屋にも戻れな
いだろうからと言うことで大家さんちに連れて行かれた。
部屋に独りになって布団に潜り込んだが、震えがとまらず一睡も出来な
かった。何故か悔しくて苦しくて涙が滲んだ。
232大学生日記:2008/04/22(火) 01:45:57
十一月九日 晴れ
三橋さんのその後が気になったのでおばさんと二人で大家さんちに押し
かけた。大家さん曰く、暴力を振るわれてはいない、この怪我は全部自
分が悪いと言っていたらしい。んなまさか。
俺もおばさんも不満げな顔押していたのに気づいたのか、なんならもう
部屋に戻っているみたいだから自分で聞いてみなさいなと追い返されて
しまった。
おばさんと二人で大家さんは酷い、なんて冷たいんだ、とか文句言いな
がらアパートに引き返した。なんと大家さんは警察には連絡しなかった
らしい。大事になったらどうするんだ!俺たちは息巻いて三橋さんを俺
の部屋に引っ張ってきておばさんと二人で昨晩のことを問い詰めた。
今日は日曜だからキッチリ吐くまでかえさねーぞと言う気迫が伝わった
のかポツリポツリと、阿部君が悪いんじゃなくって俺が悪いんだ。俺が
頼りなくてドジだから…とか言っていた。
DV受けてる人って大体皆そういうのよ!警察にちゃんと言いなさい!
とおばさんが凄い迫力で説得していた。俺も警察に言っといた方がいい
と思う。
そうしたら三橋さんが、阿部君は俺に良くしてくれてる、俺と阿部君は
恋人同士だもん酷いことなんてしないよ!みたいなことを言い出した。
ええええええまじで!?同居じゃなくて同棲なの!?
流石に俺もおばさんもその返しは想像してなかったのでしばし固まって
しまったが、すぐに我に返ったおばさんがじゃあその怪我はなんなのよ
、と問い詰めたらこれは俺が悪いんだとまた同じ返事が返ってきた。
結局その後も大体似たような問答が繰り返されたが、三橋さんは阿部と
か言う、あー、恋人?をかばい続けた。けなげだがそういうのは良くな
いぞ。取り返しが付かなくなったらどうするんだ…
俺は同性愛とか偏見無いが、警察に相談するのは勇気がいるよな。出来
るだけ助けてあげたいと思う。