メタボ「三橋君!今の内にガソリン満タンにするぞ!」

このエントリーをはてなブックマークに追加
666四畳半のウサギ 3
wikiさんへ  654の冒頭は1行改行でお願いします
>>654   ※エロなし注意

(改行なし)
そのまま戻ろうとした俺の服の袖を三橋が引っ張った。
「あっ、ま、待って…」
返品は不可だぞと思いながら振り向くと、三橋は着ていた綿入れのポケットから何かを大
事そうに出すともじもじしながらそれを俺に受け取らせようとした。
「オ、オ、オレも、阿部君に、御守り…」
「えっ?」
俺が渡したのによく似た小さな紙袋をまじまじと見る。
俺が行ったのは近所のあまり知られていない小さな神社だったのに、三橋から渡されたの
は都内でもかなり大きな100万人規模で参拝者の集まる有名どころのものだった。
「…お前、あんなところまで行ったのか…大変だっただろ?」
「う、ん、でも、オレも行ってみたかったから…」
本当にそうなのだろうか。
三橋が自分のためにより大きな御利益を求めてそこに行ったと考えるのが妥当だけど、も
し俺のために人混みを厭わず出掛けていったなんてことがあるとしたら、三橋との関係だ
って改善できるかもしれないのに。
「三橋、うれしいよ。御守りの交換になっちゃったけど、がんばろうな!」
俺は感激してつい三橋の手をぎゅっと握ってしまった。
嫌がられるかと思ったけど三橋は黙って俺に手を預けていた。
手を握られたまま三橋は俺に何かを言おうとした。
口だけが少し動いたが声にはならず、俺をわずかに見上げてパチパチと瞬きをする。
それは、涙線の緩いらしい三橋が涙を零さないようにするときの癖だと俺は知っていたの
で、何を言おうとしたのかは気になったがそっと手を離してやった。
三橋の泣くところはもう見たくなかった。


ここまで    おやすみはし