三橋「阿部君、ゴキブリ捕まえてきた よ!」

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632四畳半のウサギ 3
>>628.>>629   ※エロなし注意

突然、俺は今まで三橋に精神的な負担をかけていたんじゃないかという不安に駆られた。
三橋は醤油や味噌なんかを借りに来た以外、俺に助けを求めたことはない。
俺がよくやるお節介にまでいちいち何かを返さなければならないと考えていたのだとした
ら、妙に思い詰めてしまったのもわかるような気がする。
「三橋、試験が終わったらさ、うちに遊びに来いよ。みんな会いたがってるから歓迎され
 っぞ。俺の家族野球好きで、三橋の投球のこと話したらすげえ興味持っちゃってさ」
「えっ、あ、阿部君ち…」
「な、約束だぞ。礼とかはその時まとめて言えよ」
三橋は行くとも行かないとも答えず、ごにょごにょ呟いて曖昧な笑顔で部屋の中に引っ込
んだ。多分時間がどうとか言ったのだと思う。
俺は自分の部屋に戻ってから、神社で貰ってきた御守りを三橋に渡すのを忘れてしまった
ことに気が付いた。
明日にでも渡せばいいか…。
片付けものをしていると、隣の部屋が開く音、鍵を閉める音がして軽い足音がトントンと
階段を降りて行った。
三橋が気になってしかたない。危なっかしくて心配とかそんなのとは違う。
俺はおかしいと気のせいの呪文は効かず、何が原因かの心当たりは恐ろしくて深く考えら
れない。
少なくとも今は悩む暇さえないのだからと割り切って、俺は今日のノルマに取り掛かった。
センター試験の日はすぐそこまで来ている。