>>372 あてどなく森をさまよって、三橋はすっかりくたびれてしまいました。
「や、やっぱりキノコはただの噂だった、のかな」
そもそも百年に一度なんて見つかるわけがありません。
諦めかけたその時、三橋の鼻をなんとも素敵な匂いがくすぐりました。
まったりとまろやかでそれでいて香ばしい、胸いっぱいに吸い込みたくなるいい匂い。
メロメロになった三橋は、匂いに誘われるまま森の奥へと進みます。
どんどん匂いが濃くなって、それはみっしりと生えた蔦の奥から漂ってくるようでした。
食欲の一心でなんとか蔦をかき分け、体をねじこませた先は急斜面。
「ひゃあっー」
三橋はころころと転がって、何かにぶつかりようやっと止まることができました。
ひいひいと体を起こすとそこはすり鉢状にぽっかりと拓けた空間でした。
中央に切り株があります。さっきぶつかったのはこれでしょう。
でも三橋にはそんなことはどうでもいいことでした。
だってその切り株に、きらきらと輝く黄金のキノコが生えていたんですから!