阿部「三千世界の烏を殺し」

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977fusianasan
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ささくれ注意

数学をオレん家に来て教えて欲しい。と頼まれて来たのだが、頼んだ本人である三橋の集中力の無さに
早くもぶち切れそうだ。さっきから問題の答えを考えているのかいないのか、シャーペンすら放置して
ずっと唇を指先で弄っている。女の子と二人きりで彼女がしきりに唇を弄っているなら、
それはキスして欲しくて誘ってるサイン。だとかなんとかだと雑誌に書いてあったのを思い出し
そんなの嘘に決まってるし、第一、目の前に居るのは可愛い女の子じゃなくて、三橋だ。いつもの緩そうな
口を半開きにして下唇をぐにぐにと人差し指と親指で摘んだり、ツメ先で掻いたりして、視線の先にある筈の
ノートには焦点が当たってないアホ面だ。全く不必要な記憶を思い起こしたりするだけ無駄骨なのだ。

「三橋、やる気ねぇなら俺はもう帰るぞ」

「あっ、ご ごめんな さい、オレ、ちゃんとやるから、まだ帰らない、で」

三橋は慌ててシャーペンを握り直しノートにミミズがのたくったような字を書き出したが
やはりと言うべきか、十分後には頭がオーバーヒートを起こしたらしく解答を放棄し始め
何度もしきりに下唇を舐めたり、下唇を巻き込むようにして噛んだりと意識がすっかり余所に行って
しまっているようだ。
俺も、またもや女の子が男の前で唇を舐めるのはキスを誘っているサイン。だとかなんとかこの場に全く
不必要な偽情報を思い出したりなんかして、無性にイラっとしたり。
大体、三橋がさっきから唇ばっかり弄っているからやたらと目に付くし、弄りすぎて鬱血してるのかと
言いたいぐらい唇が赤くなってるし、なんだか下唇ぽってりしてるし、舐めてばっかりだからか
唇が濡れてやらしい感じに光ったりしてるし、なんだよ、誘ってんのかこの野郎。
978fusianasan:2008/03/10(月) 14:14:46
>>977
「三橋、何でさっきから口ばっか弄ってんの」

俺の苛ついた声にビクッとキョドついてから

「あの、オレ、口にささくれ出来てて、それすごい気に なって、それ で…つい」

なんだよ、そんなことぐらいで恥ずかしそうに上目遣いで言うな。

「そんなのリップクリームとかなんか塗っときゃいいだろ、いじるなよ」

「う、うん、オレ、リップクリーム塗る ね」

三橋はごそごそと鞄をあさってなにやらとりだし唇に塗りつけると、んー、と上下の唇を擦り合わせている。
三橋お前は出勤前のOLか。その仕草似合わな過ぎた。

まあいい、これで集中して勉強出来る。
筈だった。