阿部「三千世界の烏を殺し」

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679たべたいくらい
>>677   ※阿部獣化注意  しばらくエロなしピョア全開注意

「…おはよう、阿部君。また練習サボっちゃった…」
ズル休みしてやってきた遠くの動物園で、オレは阿部君に話しかける。
『野球部を頼む』って言われてたのに、オレは何をやっているんだろう?
大きく口を開けて牙を見せつけた黒豹は、その後ずっとオレから視線を外さなかった。
「そんな怒んなくても、いつもはちゃんとやってるよ。監督がね、田島君も大分キャッチらしく
 なってきたって言ってるんだ。でもオレは阿部君に捕ってほしいから、早く帰ってきてよ」
阿部君の前では泣き顔を見せたくなかったのに、オレはだんだん悲しくなってきて鼻をすすった。
黒豹は重力を感じさせない優美な動きで立ち上がり、金網の前に来ると頭を何度も擦りつけた。
なんだか阿部君に慰められているような気がする。
オレは背中のリュックから袋に入れてあったハンカチを取り出すと、まわりに人がいないのを確
かめてからこっそり檻に近づいた。
ハンカチを細くして檻の隙間から差し込むと、黒豹はその端を銜えてずるずると引っ張った。
このハンカチはただのハンカチじゃない。
昨日の夜、オレがオナニーしたあとでおちんちんを拭いたハンカチだ。
今ここにいる黒豹が阿部君だと確かめたくて考えついたのがこの方法だった。
黒豹はハンカチに鼻を押し付け、目を閉じた。もし人間ならうっとりした表情と言いたいところ
だけど、動物には表情をつくる顔の筋肉がないらしい。
フンフン鼻を鳴らし、ハンカチをぺろぺろ舐める黒豹を見て、オレは確信した。
あの黒豹は間違いなく阿部君だ。
オレの目から、さっきとは違う涙がだらだらと流れた。
悲しいのではなく、うれしいからでもない。
オレは待っているよ、阿部君。
阿部君がオレのところに帰ってきてくれるまで、ずっと。

チチチ…とどこかで鳥が鳴いた。
まだ眠りから覚めきらない朝の動物園で、オレは触れることの敵わない檻の中の恋人を、ただ見
つめていた。

ここまで