http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1204984521/54 「あ… あの、え と 阿部 君?」
「オレ達は、良いバッテリーだったよな」
ゆっくりとオレに向かって歩いてくる阿部君に何か云い知れぬ怖さを感じたけれど、ここで怯えたフリなんて見せたら阿部君に対して失礼だ。
オレはかろうじて平静を保ったまま、出来る限りいつもと変わらない口調で答えた。
「うっ うん、そうだ ね!」
「さぞかしカラダの相性もいいんだろうな…」
「… あ、え えーと その」
後ずさる足がパイプ椅子にぶつかってカシャンと音を立てる。
阿部君の様子がおかしいことに、そのころにはとっくに気づいていたけれど、きっと苛々しているだけだとか、からかっているんだとか、事実を認めたくない気持ちが真っ先に逃げ道を作ってしまう。
「あっ あの、もう 帰るね…遅くなっちゃ」
オレは阿部君となるべく目を合わさないようにしてドアのところまで走った。よくわからないけれど、今の阿部君と一緒にいたら非常にマズイような気がしたからだ。
阿部君の横を迂回するようにしてドアに駆け寄り手を伸ばす。あと一歩のところでそれは起こった。
「ぐあっ…!!!」
ダンッ
一瞬世界がぐるりと回り、次の瞬間、全身に衝撃が走るとともにオレはその場に転倒した。もつれた足の感触を思い出して阿部君に足をかけられたんだと気づく。
「ど …ど して?」
「なぁ、男とヤんのってどんな感じがするんだろうな?」
「しっ 知らない よっ…そんなのっ オレ知らないっ」
どんどん嫌な想像に繋がってしまう阿部君の言葉が、ただ怖くて怖くてたまらなかった。無意識に身体が震えて歯が小刻みにガチガチ音を立てる。