阿部「三橋コーヒープリーズ(チンコ頂戴)って言ってみろ」
三橋を地下室に監禁して三日が経った。
最初はギャーギャー泣いたり喚いたりしていた三橋だが、今では諦めたのかすっかり大人しくなった。
俺は今日も、三橋を閉じ込めた部屋に取り付けたカメラで、三橋の様子を観察している。
全裸の三橋の足首につけた鎖は、六畳ほどの室内をぎりぎり動き回れる長さにしておいた。
少しは動いておかないと、体が鈍ってしまうだろうと配慮してのことだ。
しかし三橋は、今日もほとんどをベッドに横たわって過ごし、時々思い出したようにベソベソ泣いていた。
俺は三橋が泣き疲れて眠ったのを確認すると、地下に下りて、三橋が眠っている部屋の鍵を開ける。
そっと隙間から中を窺うと、三橋はこちらに背を向けて眠っていた。
少し暑いくらいに設定したこの部屋の空調に、三橋は毛布を抱き締めるようにして丸まっている。
剥き出しの白い背中と、丸い尻が、薄暗い部屋に浮かび上がるように見えた。
俺は足音を立てないようベッドに近付くと、脇の小さなテーブルに食事を乗せたトレイを置く。
最初は全く手を付けなかった食事も、キチンと食べるようになった。
俺は三橋の頭を撫でると、ゆっくりと地下室を後にした。
三橋がカメラの存在に気づいたのは監禁から五日目のことだった。
覗かれてると知っても騒いだりはしなかったが、三橋はカメラに向かって話し掛けてきた。
「…見てるんでしょう?オレの、こと。あ、あなたは誰、なんですか?お、オレをどうするつもりですか?」
もちろん俺は答えない。ただ三橋の声をじっと聞いている。
「ねえ、なんとか…、なんとか言ってください。オレを、家に帰してください。お、お父さんと、お母さんに、会いたい…」
そこまで言うと、三橋はまたぐずぐずと泣き出した。
泣きながら、癇癪を起こした子供のように、ベッドの羽枕を振り回し、小さなサイドテーブルを倒し、足の鎖を引き千切ろうと暴れまわる。
初日もこんなふうだった。疲れるまで繰り返し、倒れるように眠り、また目覚めて暴れる。
結局は逃げられないと悟った三橋は、床に突っ伏して大声で泣いたが、しばらくすると諦めてまた元の大人しい三橋に戻った。