>>237 ※ここまで
ドキリと心臓が跳ね上がる。どうして、なんで、という疑問符ばかり浮かんできて言葉にならない。
「あ りえない…だろ? な 何言って」
「…だって、紅白戦のとき ずっと見てたじゃん」
「っ!? …な なん で リューが」
「見てたもん。 …ていうかさー、レンってもしかしてあの捕手のこと」
「ちっ 違う! 違うよっ!!」
「…まだ何も言ってないんだけど」
「とっとにかく、違うったら違うから!!」
「へー 庇うんだ」
「だ だから、そうじゃなくて! …オッ オレと阿部君はバッテリーで だから そういうのじゃなくて、信頼関係なん…」
「信頼ねェ…」
見たこともないような怖い顔をして何か考え込んでいる琉に、オレは何て言ったらいいのかわからなかった。ただ、ものすごく嫌な予感がしたのだけは確かだ。
「…レンはさ、オレだけ見てればいいよ」
「そっ そ んなこと 言われて も…」
「恋人とかさ、友達とかさ、家族とかさ、そういうの レンには必要ない。 …阿部とかいう奴も」
琉が何を言っているのか、最初からさっぱりわからなかったけれど、ここまできてようやく感の鈍いオレでも察することができた。
「…アッ 阿部君には 何も しないで…っ」
「何それ? …するもなにも、オレ近寄りたくもないね。ああいう奴、大っ嫌いだ」
何がそんなに気分を害したのかわからなかったけど、琉はオレの弁解に耳も貸さずにさっさと体を流して出て行ってしまった。
解放された嬉しさと、機嫌を損ねてしまったことへのの恐怖で、複雑な気持ちのままペタンと尻もちをつく。
だけど、よくよく考えてみたら阿部君はオレと違って強いから、中2の琉に負けるはずがない。
さっきは咄嗟にあんなことを口走ってしまったけれど、なんだ…オレが心配することはないじゃないか。
…この時のオレは、琉の本当の恐ろしさをまだ知らなかった。