ストリップ劇場で働くことになった三橋
投球以外何も身に付けていなかった三橋は美しい動きができない。
そこで穴から万国旗をぴろぴろだすという芸で客を楽しませようと試みる。
しかしウケない、
誰かがげらげらと笑い始めた。劇場にやがて「ひっこめ不細工」という声が混じる。
一人が面白がって卵を投げつけてきた。
グシュっと卵は顔面で割れて白身と黄身がべっとりとほほに髪についた。
次々と観客からぶつけられるゴミや罵声。
しかし三橋はひたすら万国旗を穴からひっぱり続けた。
アメリカ、イギリス、フランス、中国…色とりどりの国旗はひゅるひゅるとつみ上がっていく。
いつしか罵声がやんでいた。
ごくりと生唾を飲み込む音が聞こえてくるほど劇場はしんと静まり返った。
「これ で…お おしまい…!」
膨大な長さの万国旗を穴から出し終えると三橋は立ち上がってペコリと観客に向けて頭を下げた。
その瞬間、わあっと歓声が上がった。誰もが「ミハシ!ミハシ!」とステージに立つ彼の名前を呼んだ。
三橋の穴からでてきた万国旗は384メートル
その偉業は今だ誰にも破られていない