阿部「三橋の穴はよく客食う穴だ」

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985投手俺と三橋
前回はwiki参照で。注意 エロ無・捏造有


俺は今白み始めた空の下、早朝ランニングをしている。この時期になると早朝だというのにもう結構暑い。
まだ10分くらいしか走っていないのに汗が噴出し、既に喉の奥がひりひりして足が重い。
こんなに鈍っているなんて思わなかっただけにショックだ。
でも昨日の投球ではそんなに衰えは感じられなかった事は喜ぶべきところだろう。コントロールの件は置いといてだが。
結局俺はあの後家に帰ってから一人壁に向かって投球をしていた。
キャッチが居ないというのは味気ないが、それでも薄暗闇に走る白球を見ると心が躍る。
俺は野球がしたかったんだ、そう確信した。
認めてしまえば楽なもので、すぐにあの頃の感覚を思い出せた。野球馬鹿だったあの頃。


『うちに入らない?』
昨日女監督にそう言われた事を思い出す。
部員は全員一年でまだ身体もしっかりと作られてはいなかった。ほんとに野球部かってほど全員が細身だった。
俺も筋肉ついてるほうじゃないけど、彼らより一年長く生きてるだけあってそこそこガタイは良い。
それに投手の替えも少ないらしい。試合経験のほとんどないやつらを鍛えてるって話だ。
だからいくらブランクがあるといってもそこまで彼らの足を引っ張るということはない、と思うわけだ。
それでも俺は踏み出せずにいる。
確かに昨日はそこそこに充実した時間だった。あの女監督には引いたが…。
そして野球をやりたい俺がいる。
それでもやはりあそこには入れないと思う。
思い浮かぶのはあそこでエースと呼ばれていた少年。
釣り目がちの目はいつも涙が零れそうなほど濡れていて、俯いた視線は決して交わらなかった。
体の線が細いだけじゃなくて、猫背気味のその背中が余計に頼りなさを醸し出していた。
エースと呼ばれる少年がだ。
結局昨日は彼の投球を見ることは出来なかったが、あれではあまり期待できない。
俺の方がマシだ、などと言うつもりはないが、アレと一緒に競い合うのも正直微妙だ。
言葉が通じてないのもムカつく。
「やっぱ、暫くは一人だな。」
体力が戻ってきたら草野球にでも混ぜてもらおう。