阿部「失くした約束は星に 思い出はとけない」

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672fusianasan
阿部君に突然告白された。
オレが好きなんだという。ずっと前から好きだったという。
びっくりした。呆然とした。そして、困惑した。
だってオレ、彼女いる、よ。
阿部君は知ってる、と頷く。でも、黙ってるの我慢できそうになかったんだ。
そう言って笑った阿部君の顔は、とても落ち着いたものだったから、オレは完全に油断していた。
さっきから眠くて眠くてたまらなかったんだけど、それがオレに出されたジュースに溶けた睡眠薬のせいだなんて、誰が気付くだろう。
勉強を教えてくれていた阿部君に悪いからって、眠くなるたびに必死になって、シャーペンの先っぽで太股をつついていたオレは、ほんとバカだ。
プロテインを砕くみたいに、溶かしやすいように、睡眠薬を小さく粉にするのは難しかった。
丁寧に教えてくれる阿部君の表情はとっても穏やかで、オレの混乱は増すばかりだ。
少なくとも、ベッドに寝かされ、両手両足を縛られている、この状況には、ふさわしく、ない。
「……みはし」
阿部君はオレにのしかかると、顔を近付ける。耳元でオレの名前を、今までに聞いたこともないような、熱っぽい声で呼んだ。
生暖かい息があたって、ぞわっと悪寒が走る。阿部君の重なる身体の部分が、すごく熱くて、オレは生唾を飲み込む。
こわい。こわいこわいこわい。
阿部君の大きなごつごつした手が、オレの胸をなで上げた。気持ちが悪くて涙がにじんだ。
「泣くなよ……」
そうやって、慰める口調は、いつもの阿部君なのに。
でも、間近で見て気付いた、んだ。
その両眼が、底の見えないほど真っ暗で、眼孔のふちが、妙に赤く染まっていることに。
ふつうっぽく見えるけど、いまの阿部君、全然フツウじゃ、ない。
うまく、こ、言葉、にできない、ケド、お、おかしいよ阿部君。