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車の窓から見えた河川敷。自転車に誘導されながら白いユニホームに身を包んだ男子が足並みを揃えて走っている。
オレは青春を謳歌する若者の姿の手前、薄汚れた窓に映る己の気力のなさ気な表情にむかって重くため息をついた。
どうして俺はここにいるのだろう。
中学高校と野球部のエースとして情熱を注ぐ日々を送っていたが、大学ではその情熱を失いただ目的もなく送る日々。
そして次々と就職先をきめていく仲間の背を見送り、ついには就職口も見つからないままバイトとして働いている此処は…
『はぁ…!安田くんの、熱いよぉ!』
「ぬっは〜優奈ちゃん可愛いの〜!エネルギーMAX!チンコ滾wっwてwきwまwんwたwwwww」
「安田テメー車ん中でオナったらぶっ殺すかんな。新入りもぼーっとしてねぇで監視してろ!」
「は、はい!」
助手席のモジさんは俺たちに怒声を飛ばした後、あーマジきめーよアイツと運転手の隊長にブツブツ愚痴を零しながら前へ向きなおす。
強面の先輩に怒られ強張った体のまま、隣の席に座るキモデブへ目を向ければ、太ももに乗るノートパソコンの中の美少女がモザイクの掛か
った秘部を露わにして身悶えている映像が。よく人のいるところでこんな際どい(というかアウアウだ)の見れるものだ。
ジーっとパソコン上の彼女をみられていることに気づいたのか、キモデブこと安田先輩は眼鏡の奥の細い一重の目で俺を湿っぽく睨んでくる。
「し、新入り!僕の優奈ちゃんが可愛いからって、い、い、いやらしい目で見るな!」
「はァ…」
鼻息荒くアッチ向いてろと追い立てられ、俺はすごすごと窓へ視線を移す。車は住宅街に入り、細い路地を進んでいるところだった。
*
車が止まったのは住宅街の一角。目の前にはごく一般のお宅があった。
「あのー撮影って何の撮影ですか?」
長時間の運転を終えて体を伸ばしている撮影隊長に問うと、眼鏡の奥の細い目を更に細め「あぁ、今日からだもんな」とこめかみを掻いたあと、
「まぁ、今日見てれば分かるさ」
適当に仕事内容を濁された。人事募集蘭に自然環境ビデオ制作などのアシスタントとあったが、未だ詳しい内容説明をされていない。
まぁ昨日の密度のない面接からして、ここが俗に言うブラック会社であるのは分かっていた。その割りに高給なところに釣られたんだ、
ある程度の過酷労働ならどんと来い!と思うけれども、此処に着てまで詳細を聞けないとは、どんな撮影をするのか心配になってきた。
「コラ!新入り早く来い!」
ほーっと突っ立っていた俺を見つけたモジさんが後部に積み込まれた機材を運ぶよう怒鳴った。閑静な住宅街にその声が良く響く事。
先輩方の指示を受けて重い機材を抱えながら向かったのは、目の前の『阿部』という表札が掲げてあるお宅だ。
気になることが多々あるがここで口を出すとモジさんにどつかれだろうと口を噤んで、インターホンを押す痩躯な隊長の姿をジッと伺う。
ピーンポーン。珍しくもないチャイムが響いた後、中からドタドタと家人が玄関に向かってくる音が聞こえた。