三橋「三橋穴が過疎ですぬ」

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641fusianasan
きみはペットを知らない俺がタイトルから膨らませて書いてみたよ


「よーお疲れ。今日帰り、行くだろ?」
クッとグラスを傾ける仕草をする同僚の中村に手を振り、荷物をまとめ始める。
「わり、オレパス」
「なんだよー最近付き合いわりーなぁ。もしかして、彼女?」
ニヤつく顔と下世話な質問に、ふと高校時代の某クソレフトが浮かんだ。
懐かしいな。
あいつら元気でやってんだろうか。まあ十中八九元気モリモリだな。
ひとり思いを馳せるオレに、中村がしつこくなあなあと問いただしてくる。
「ちげーよ」
「んなこと言っちゃって〜。で?かわいい?」
「いねえっつってんだろ」
ちょっとドスきかせてみると、いじいじ人差し指を合わせて「怒ることないじゃーん」とか言い出した。ほんとコイツクソっぽいな。
「じゃあ何で来ねーの?」
お前酒好きじゃん。とかいう言葉が終わらないうちに、鞄を手にデスクを離れる。オレの安らかな休日がやってくる。
凝った肩を鳴らし、まだグジグジ言ってる中村に首だけ捻って答えた。
「ペット飼い始めたんだよ」


かじかむ手でドアノブを引く。
ふわっと広がる暖かい光と心地よい温もり。
寒さで硬直した頬もつい緩む。
すぐにパタパタと足音がして、ヒョコッと茶色いくせ毛が顔を出した。
「阿部君、おお、おかえりっ」