うんこ!うんこ!恋人の日のおくりもの!
※しっこ分補給・エロ無し
右隣に目をやるとそこにもまた一人、坊主頭の少年が膝をそろえて座っていた。
しかしその頭髪は他のいがぐり坊主と比較してみると焼き栗と生栗以上に見栄えが違う、薄い色味をしていた。
また質感も細くぽやぽやとしており、どことなく羽毛を連想させる。
彼は両の膝頭を体格的には不釣り合いに見えるほど長い指で握りしめ、その十本の指を上から支える両腕が俺の右腕に当たっている。
彼の手の中で膝が上下する。た、 たん。た、 たん。た、 たん。拳の中へ膝がのぼり踵が床へおりていく。
床を見ると彼が履いているのは斜めにニケの翼の白が入ったスニーカーで、爪先は一切動いていない。
ただ踵だけが、た、 たん。た、 たん、二拍子に一拍休止符、た、 たん。た、 たん。
ゴムの底が床を叩くその動きが列車の揺れに共振し彼の腕から俺の腕へと伝わってくる。
「な、ミハシぃー」
小猿が愛嬌たっぷりに歯をむき出しにする。隣の少年はそれを受けて曖昧にほほえんだ。
「そ、そおなの?オレ、それ読んだことないから、よく分からない……」
もじりと膝小僧の握り拳がくねりズボンの皺が表情を変える。
それと同時に指がさりげなく股の隙間にねじり込まれた。
合わせた両手を足の間で何度か擦り、太ももの間に甲をなすりつけている。
最初に指先が消えたかと見るや、どんどんと二枚の手が足の隙間へと潜り込んでしまい、
最後に残ったのは手首だけになった。
ジャージのパンツの柔らかい生地が二本腕の輪郭にそって丸く窪んでいる。
「えぇっ、お前、こないだ一緒に読んだじゃん。あれだよマガジンのさぁ。星の親父が怖すぎるって言ってたじゃん!」
両手を吊り輪にぶら下げて小猿が膝の上に乗り出してくるのを、ひよこ頭はハ、ハ、ハと小さく笑ってとりなしていた。
目を閉じる。中途半端な居眠りと覚醒にありがちな頭痛を覚える。脳に張り巡らされた毛細血管がことごとく膨れて周囲の細胞を圧迫しているような痺れ。
いますぐ我が家に飛んで帰ってあのあたたかな布団の中へ潜り込みたい。もう一週間近くご無沙汰の綿のパンパンに詰まった俺の敷き布団。
ブンッと宙を切る小猿の肘を避けなるべくシートの端に、鉄製の手すりの隙間から頭を突き出すようにする。
「ちょっと、田島君。まわりの人に迷惑だよ」だなどと女の子の声が注意を呼びかけているが、田島というのか覚えてろよ小猿。
ちくしょう今夜は更なる安眠を促すために、永久保存と心に決めていた星野絵理香のベッドシーツ下ろしてやる。俺は信じてるからなトノイケ!
ライ麦畑の監視人には絶対になれないであろう不穏な心持ちで腕と足を組み電車に揺られているうちに、それでも心は夢の中のトウモロコシ畑へと誘われていく。
今日は未完成のエロゲ崩すよりもDVD借りてきてビールでも飲むかという気分だな。TSUTAYAに寄っていこうそうしよう。
ツマはなににすんべとコンビニの棚を脳内に構築していると横っ尻に何かが押しつけられた。
もぞり、とひらがなを筆文字で描いたような鈍重な動きで隣の少年が尻を揺らしている。