ショタに目覚めたので子三橋投下
「う…うあ……」
少年と呼ぶ事すらもまだ早いような幼児は、目の前に立ち塞がるそれを見て足を竦ませていた。
目線こそ同じものの、胴体は自分の身長の倍はある。真っ黒い毛並みに大きな手足、窪んだ瞳は真っ直ぐ自分を見てじっと動かない。
ハッハッと細かく息を切らしていたのはどちらか。
「レンー?どこだー?レーンー!」
甲高い声が響き、呼ばれた幼子はピクリと指先を震わせた。
整えられた草木の隅、見渡すほどの広さの庭は観葉植物がいくつも並べられ、小さな身体は陰にすっぽりと隠れていた。
たまに訪れる祖父の家で、毎回楽しみにしているのは向かいに住む同い年との探険ごっこや鬼ごっこ、家全体を使った贅沢な隠れんぼ。
「し…しゅうちゃ…たすけ…」
必死に絞り出した声は蚊の羽音ほどもなく、ドタドタと廊下を駆けて行く足音に書き消される。
不意に尖った鼻先から出た咳のようなくしゃみのような息に廉はビクリと肩を震わせ、反射的に小さな手で顔を覆った。
目の前の生き物が恐くてしょうがない。見慣れている公園や空き地で見るような小柄でフワフワしたものとは程遠く、同じ「犬」という種類とは廉には全く思えなかった。