阿部「三橋!豆まきするぞ!」

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79インソムニア(代理投下)
本スレ、ヤンデレ元気出せよ、ってことで書いたらアク禁だった
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(鬱注意)

処方されてるのは、一日に4錠までなのに、今日もオレはその白い錠剤の誘惑に負けて
倍量以上の睡眠導入剤を流し込む。
薬を飲まないと、禁断症状みたいにブルブルと小刻みな震えが止まらずに手元もおぼつかない。
人工的物質で無理矢理脳みその活動を押さえ込んで、機械的な眠りについても尚、夢の中で
オレは眠ることが出来なくて嘔吐を繰り返していた。

「どうやら君は、初期の不眠症のようだね。」
そう先生に言われたのが一ヶ月前。夏大の真っ最中だというのに、オレ自身の不注意から
右手首を捻って、少なくとも二週間は投球を控えるようにと診断された直後だった。
妄信的にずっと続くと思い込んでいた一年目の夏は、悔やむ暇もないほどあっけなく幕を閉じて
練習のメニューも、対戦校に合わせた試合用のそれから、通常のものに戻っていた。
ただ一つ違ったのは、一段高く整備されているマウンドの上に立っているのは沖君か花井君で、
オレはそれを遠い遠いベンチからぼんやりと見ているだけだということだ。
ミットを構える阿部君を、18.44メートルの真正面の位置以外から見るのはとても不思議な気分で
その横顔は誰か別人のように思える。
あの負け試合の日から、阿部君とはまともに会話らしい会話をしていなかった。
阿部君の顔を見るのが辛い。阿部君も前みたいにオレを本気で怒鳴ったりしなくなって
どこか余所余所しく遠慮がちに事務連絡なんかを教えてくれるくらい。
二週間がたって、ようやくリハビリを始めてからも、オレの右手は自分のものではないように、
狙いを定めても、脳から指先に命令が伝わらないみたく、九分割が出来なくなっていた。

どうやってコントロールしていたんだっけ。考えても考えても感覚が取り戻せずに一晩が過ぎ、
布団の中で一睡もできないまま学校に行ったその翌日も、やっぱりオレは眠いのに寝れない。
ただ少しでも眠りたい一心で、いつも自分で出した後は体が一気に重くなるのを思い出して
何度も何度も射精を繰り返すまでオナニーを続けた。
翌朝けたたましい目覚ましに呼び起こされて辺りを確認すると、ティッシュで処理しきれなかった精液が
べっとりとシーツを汚していて、その染みが、惨めなオレをあざ笑うかのようにこちらを見ていた。