阿部「三橋!年の数だけケツに豆を入れるぞ」

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608fusianasan
「なー、節分やろうぜ! 節分!」

田島君の一言で野球部のみんなで節分をすることになった。家がでかいから、ということでオレんちに集まることになったんだ。みんなが来るのは久しぶりですっごい楽しみ!
寿司とか豆とかオレらが持ち寄るから三橋は何も準備しなくていいよ、家提供してくれるだけでありがたいんだから、気を使うなよって花井君とか栄口君とかに言われたんだけど本当に嬉しくて仕方なくて、
朝からお母さんと駅前の小僧寿しまでかぶり寿司を買いに行ったりジュースを買ったりしてたんだ。

「それじゃお母さん仕事行ってくるから。お寿司みんなでわけなさいね」
「うん! お母さんありがとう」
家のガレージでエンジンをかけたままの車の中からお母さんがお寿司とジュースの入ったレジ袋をオレに渡した。
「じゃあね、なるべく早く帰るから」
「いってらっしゃい」
お母さんも何だか機嫌がいい。オレもすっごくすごくニコニコしてる。お寿司とジュースの重みが嬉しい。何だかじっとしていられなくて小さくなっていくお母さんの車に大きく手を振った。嬉しい、嬉しい。

飾り付けとかしちゃおうかな、クラッカーとかも買えばよかったかな、テーブルの上に置いた小僧寿しの包みを見ながらニコついているとポケットに入れたケータイがブルブルっと震えた。玄関からも呼び鈴が鳴っている。
みんな来たみたいだ。緩む頬をペシペシ叩きながら玄関へ向かった。


***

「おぉ! うまそう!」
「何だよ、何もしなくていいって言ったのに」
「気ぃ使わせたみたいでごめんなー」

みんなが居間に入ってきた。手に手にタッパーやらレジ袋やらを持っている。テーブルに置いた小僧寿しの包みに気付いたみんなが、悪いなって顔でオレを見て口々に声をかけてきた。
みんなちゃんと持ち寄って用意してきたのに、オレが中途半端に用意したものだから、かえってみんなの気を使わせてしまったみたいだ。
気にしないで、オレが勝手に準備したんだから、そう言おうとしたけどうまく言えなくて「全然、へ、平気だ、よ」とだけやっと口にすることができた。


みんなが持ち寄ってきてくれたものをリビングのテーブルに並べると、壮観!って感じになった。太巻きとか太巻きとか太巻きとか唐揚げとか太巻きとか煮物とか豆とかお菓子とか太巻きとかずらりとひしめいている。
太巻き天国!って感じになった。阿部君が手際よくドリンクをいれたコップをみんなに回していく。
慌ててコップを受け取りつつお魚天国を♪ムッフッフフ〜と知らぬ間にハミングしていた。
そんなオレに「三橋楽しそうだな!」田島君がニコッといい笑顔でヘッドロックをかけ、♪ふとまきふとまき〜と歌いだした。