「落ち着いたなら、説明してくれるか?」
オレが泣き止んだら、阿部くんが背中をゆっくり撫でながら言った。
頷いて口を開く。長くなっちゃった舌が邪魔で仕方ない。
「ぅ、わう、」
喋ろうとしてもやっぱり声が出ない。犬の鳴き声だ。
また泣きそうになったオレを、阿部くんがわしわしと撫でてくれた。
「喋れないならほら。紙に書けばいいだろ」
目の前に紙とシャーペンが差し出された。阿部くんは、やっぱりすごい!
オレは全然そんな事思いつかなかったのに、阿部くんは冷静、だ。
ちょっと笑ってから、シャーペンを爪で傷つけないように書いた。
夢の事、今朝の事、姿は変わっちゃったけど中身はちゃんとオレだってこと。
元から汚いオレの字が書きにくいせいでさらに汚くなっちゃったけど、
阿部くんは真剣に読んでくれた。読みながら口元に手を当てて考えてる。
安心したら、お腹が空いてることに気づいてしまった。
考えてみたら今朝から何も食べてない。もう夕方だ。…台所、行ってもいいかな。
でも阿部くんはオレの為に今考えてくれてるんだよな。悪い、かな…
考え込んでいたら、お腹がぎゅーって鳴ってしまった。
阿部くんが紙からオレに視線を向けて、ヒッと息を呑んだ。