阿部「俺らは無邪気に常識を飛び越えていく」

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894fusianasan
昨日の続き
wikiにある"ホラー"ってのが多分そうなんだと思うがタイトル決めかねている


「どーした三橋?なんか震えてねえ?」
阿部と水谷が何か言う前に、食事を購入し終えた花井の声が三橋の頭の上から降ってくる。
トレーを持っていない方の手を三橋の肩にぽんと置いた。
見た目以上に激しく震える肩に驚いた花井は眉根を寄せて三橋の顔を覗き混んだ。
「だい、だいじょーぶ…だよっ」
震えを少しでも押えようと両手を胸の前でがっちり握って三橋は花井を見上げる。
こんな震えてちっともダイジョーブじゃねーだろ泣きそうだし。と花井は思ったが
三橋の表情は一切の詮索を拒絶しているように見えたので、三橋の肩を掴む手にグっと力を込めるだけにした。
花井の力強い手が三橋には少し心強かった。オレが付いてるぞと言われているような気がして。
「大丈夫。オレ、教室戻る よ」
名残惜しい気持ちと一緒に花井の手を振り解くと、少女から逃げるように三橋はその場を離れた。
「おまっ、何も食ってねーじゃねえか!」
楽しげな生徒の中に消えて行く三橋の頼りない背中に、阿部の怒号とイスが床を削る音が突き刺ささる。
「もう、時間ない から!皆、待ってると、いけない し」
三橋が見えなくなってから、スプーンを咥えた水谷が自分の時計を見て
「昼休みってあと40分はあるよね〜…」
と呟いた。
花井の手には三橋の震えの余韻が残っている。
複雑な表情で三橋の消えていった学食の入り口を見つめた。
黒いセーラーの少女もずるずると猫飯を運びながら、三橋の去って行った方向をいつまでも睨んでいた。