阿部「Airはエロゲじゃない。泣きゲーだ。人生だ」
前も保管ないので、今回も保管らめぇ。
要約。 インフルエンザを引き込んだ三橋の代わりに出張に行ってる俺の話。
愛用のボストンバッグを片手にタクシーを降りた。3階建てアパートの三階、一番端が俺の部屋だ。
「はあ、つっかれた」
新幹線に乗っても遠いものは遠い。今回の出張もまた山の中だった。
いい加減、雪も見慣れたし、ゆでタコの刺身にも飽きた。せめて旨い肉と酒くらい出てもバチは
当たらないと思うんだ、正月だし!
だがしかし、しなびた女将の出す料理は代わり映えしなかった。タコがイカに替わったくらいだ。
一応きんとんが付いていたのだけは嬉しかったが。
「社会人は辛いね」
ブチブチと愚痴をつぶやきつつ、我が部屋を見上げれば、なんと明かりが付いていた。
「やべぇ、スイッチ切るの忘れたか?」
もったいねえ、電子ちゃんに叱られちまうよ。慌てて階段を駆け上がる。
ポケットから取り出したカギをつっこむと同時くらいに、勢いよくドアが開いた。
「うぉ…っ」
「お、おかえり、なさいっ」
ふわふわした茶色の頭がぴょこんと飛び出てくる。
「み、み、ミハシ?」
俺がこの仕事をするハメになった元凶が、何故か俺の部屋にいた。
「やっ山、寒い、よねっ。ゴハン、出来てる、よー」
何故、ご飯が。いや、それより何故ここに。
「か、カニ買ったんだ、よ。生きてるやつ。だから、今日はかにすき、だよっ」
ふわんと漂うのは確かにカニの香り。
ゲンキンなもので腹の虫がぐうぐうと騒ぎだした。部屋は暖かそうだし、メシは旨そうだし、謎の解明はあとでいいか。
俺は促されるまま部屋に入り、カニを頬張った。
ぷりぷりした身はジューシィで、鍋の出汁も最高で、最後の雑炊まで綺麗にかっさらってようやく謎を解明する気に
なった。