阿部「また三橋の自演か」

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333S×M

遠くで、オレが一番好きで嫌いでもある音が響く。
(・・・なんの、おと・・・だっけ・・・?)
まだ夢と現を朦朧と行き来する思考は、昨日飲まさされた薬みたいなものの後遺症か、なかなかスッキリと晴れない。
カキーン、という乾いた音がしてその後にはたくさんの人の歓声。
(ああ、そっか、近くで・・・野球・・・してるんだ・・・)
ベンチにいる時や、塁に出ている時にその音が鳴り響くと背筋がぞくぞくして嬉しくなる。
けれど、マウンドにいるオレはその音を聞くのが、世界の何よりも怖い。
(でも・・・はやく、野球・・・したいな・・・)
体が泥のように重く、延々と弄ばれた部分部分が、いまだに苦痛を刻み続けている。
本来なら夏の容赦ない日差しが差し込むはずのこの部屋は、厚い遮光カーテンで覆われて、まだ夜のように暗いままだった。

もぞもぞと上体を起こして改めてあたりを確認すると、やっぱりオレは裸に首輪というおかしな姿で、ベットの上では
阿部くんが静かな寝息をたてていた。
全部夢だったら良かったのに。
普段いくら頑張っても公式ひとつまともに覚えられないくせに、こんな時だけオレの脳みそはしっかり昨日あったこと全てを覚えている。
変な水を飲まされた後、頭がくらくらして判断力がなくなった。体は全身が粘膜になったみたいにすごく敏感に疼いて、
縛られたり、叩かれたり、熱を加えられたり、そんなことだけでいやらしく反応してしまった。
(どうして、こんなことするの?・・・阿部くん)
閉塞された暗闇の中でかすかに見える阿部くんの寝顔は、冷静沈着ですぐ怒鳴るけれどちゃんとオレのことを考えてくれる、
いつもと変わらない姿に見える。
でも、確かに昨日の嗜虐的でどこか病んだような目をした阿部くんは「そこにいた」。
(それに・・・、)
薬を飲まされていたとはいえ、あの変態的な行為に快楽を覚えてしまった自分は正常なのか、と聞かれれば
言い訳は出来ないような気がする。
追い討ちをかけるかのように、昨日のことを思い浮かべていたオレのペニスが半勃ちになって、未だに根元を拘束されたまま
じんじんと疼いた。