話の辻褄あわなくなった
引退してんのに練習後ってどういうこと?まあ細かい事は気にしないでくれ
いつもみたいにみんなに寄り道に誘われたけど
今日はなぜだか気分が乗らなくて断ってしまった。
一人で自転車にまたがって見た空に星は一つも輝いて見えない。
まだ秋の始まりを感じないくらいだったのに
弱々しい風が吹くたびなんだか半そででは寒い気がして縮こまる。
それでも体は温まらなくてクシャミを一つ、二つしてしまった。
「風邪…ひいちゃうや」
風邪引いたら阿部くんに怒られちゃう。
あ、でももうオレは西浦のエースじゃないから関係ないのかな。
阿部くんには他に大切な人もできたみたいだし
もう前みたいにオレの事怒ったり心配してくれる事なんてないのかも。
当たり前だ。
オレはそれを当たり前のように受けてきた。
ぜんぶぜんぶ阿部くんのくれたものはオレに対する愛情だったのに。
オレから手放した。
視界がだんだんユラユラして、前が見えなくなって自転車を漕ぐのをやめた。
そこに足をついて踏ん張る。
口にしょっぱいものがたくさん入ってきて苦しい。
鼻が詰まって息が出来ない。
そうか、オレはきっとずっと。
阿部くんの事が好きだったんだ。