Berryz工房のエロ小説を書こうよ!!! part3

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85書く人 ◆ZBov0fGF0M

 待ち合わせの場所に彼女の姿を見つけて、慌てて小走りになる。
 彼女は、いつも僕を待っている。
 5分前に来ても、10分前に来ても、30分前に来ても。
 女の子は彼氏を待っているもの、というのが、彼女の理想らしい。
 その理想を実現するために、彼女がいったいいつから僕を待っているのか。
 どれだけ早く来たら、彼女を待っていられるのか、確かめてみたいと思うことはあるけれど、怖い気もする。
 彼女はにこにこと柔らかな笑顔を、僕に向けて浮かべていた。
 僕が彼女を見つけるよりずっと前に、彼女は僕を見つけていたようだ。
「ごめんなさい、えりかさん。待たせてしまって」
 謝ると、僕よりも少し背の高い彼女、梅田えりかさんが、微笑んだままで首を振った。
「そんなに待ってないよ。まだ約束の時間より前だし」
 確かに時計は、約束した時間の5分前を指している。
 僕はこの時点で、すでに自分の犯した失敗に気づいていたが、なんとかごまかせると思って、あえて触れないようにした。
「映画の時間、何時からだっけ?」
「40分からだから、ゆっくり歩いても余裕だよ」
 微笑んだままのえりかさんは、いつもと変わらぬ口調で答えたので、気づかれなかったと思い、僕は胸を撫で下ろした。
 しかし。
「それより」変わらぬ笑顔で、「また、さん付けしたよね?」
 僕の失敗を突いてくる。
86書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:04:45

「あ、いや、そうでしたっけ……?」
「敬語も」
 続けて指摘され、言葉に詰まる。
 さん付け禁止。
 敬語禁止。
 付き合い始めたとき、えりかさんに約束させられたことだった。
 身長だけでなく、歳も2つ上なので、つい敬語を使ってしまう。
 もしも破ったら。
「じゃあ、わかってるよね」
 瞼を下ろし、ちょん、と唇を尖らす、えりかさん。
 もしも破ったら、どこであろうと、キスをすること。
 それが僕に科せられたペナルティだった。
 人目のないところだったらいいけれど、さすがに人通りもあるし、と逡巡する。
 えりかさんはその姿勢のまま、微動だにしない。
 その様子を不審に思い、視線を向けながら通り過ぎていく人たちが現れ始める。
 このままだともっと増えてしまう。
 熱くなる頬を無視して、唇を重ねた。
 柔らかい感触に、胸が鳴る。
 これは罰ゲームではなく、約束を破られて傷ついた心を慰めるためのものだ、というようなことを、えりかさんに言われた。
 そうなんだ、と思うしかない。
 目を開けたえりかさんは嬉しそうに、本当に嬉しそうに満面の笑みを浮かべ、腕を組んでくる。
 僕の身長のせいで、少しバランスが悪い。
 キスを目撃したらしいサラリーマンが、顔をしかめて通り過ぎていったが、えりかさんの目には映っていないようだった。
 僕は、顔から火が出るほど恥ずかしかったけれど、えりかさんが嬉しそうだったから、それで良かったのだと思うことにする。

87書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:05:06


 僕らが付き合うことになったのは、卒業式の日に、えりかさんに呼び出されたのがきっかけだった。
88書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:05:37

 卒業式の朝、クラスメイトから手渡された手紙に、式が終わったら書庫に来てほしい、
という文面と、梅田えりか、という名前が書かれていた。 
 アイドルが同じ学校に通っていると噂になっていたので、何度か遠くから見かけたことはあったけれど、
直接の面識はなく、呼び出される理由がわからなかった。
 僕をだまして、みんなで笑おうとしているんだろうか。
 書庫に行くと、隠れていたみんなが飛び出してきて、僕を指差して笑う、というドッキリみたいなことを企んでいるんだろうか。
 そうだとしか考えられない。
 机の中に入れられていたら、気づかなかったとか、読むのを忘れていたとか、
ごまかしようはあるけれど、手渡されているので、そういった言い訳は通じないだろう。
 行ったとしても、笑い話で済むだろう。
 むしろ、行かなかった時の方が、みんなを盛り下げてしまって、後が怖い。
 しかたがない、このいたずらに付き合ってやるか。
89書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:06:11


 あの時の僕は、そんなふうに考えていた。
 後に起こることなど、つゆほども知らずに。
90書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:06:48

 卒業式が終わり、教室に戻ると、担任が連絡事項を伝えて、放課後になる。
 教室で雑談していたり、部活に行ったり、塾へ向かったり、早々に帰ったり、
卒業生を見送りに行ったりと、それぞれ思い思いに行動している。
 帰りにカラオケに行くという友人に誘われたけど、用事があると断った。
 そこで、おや、と首を傾げた。
 これから引っ掛けようという相手を、カラオケに誘う?
 おかしいな、と違和感を感じた。
 それも演技だとすれば、たいした手の込みようだ。
 だけど、そこまでするだろうか。
 まあいい。ともかく、書庫へ向かおう。それではっきりするはずだ。
 手紙をポケットに入れて、教室を出る。
 廊下を歩きながら、考えをめぐらせる。
 引っ掛けようとしているのが、クラスメイトではなく卒業生たちだったら。
 教師にお礼参りという話は聞いたことがあるが、生徒に対してなんて聞いたことはないし、
だいいち今時そんなことをする人がいるんだろうか。
 それに、僕は特に目立つ生徒でもないはずだ。
 身長はクラスでちょうど真ん中。
 顔立ちは女みたいだとよくからかわれて、あまり好きじゃない。
 強いて言うなら、外見と名前が女みたいだと言われるのが嫌で、小学生の頃から空手を習っているが、道場の外で使ったことはない。
 思い当たるところは、全くない。
 やっぱり手の込んだドッキリなんだろう。
 そんなことを考えながら、階段を上り、廊下をさらに進んで、書庫の前に着いた。
 図書室からも入れるけれど、まだ生徒がいるかもしれない。
 無関係の生徒に見られるのは、何となく嫌だった。
 開けようとするが、鍵がかかっていて開かなかった。
 図書委員を除けば、普段、使うことのない場所なので当然かもしれないけれど、
開けるなり驚かされると思っていた僕は、ちょっと予想外だった。
91書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:07:16

 さて、どうしようか。
 そう思って迷っていると、中から鍵が開く音。
 静かに、様子を窺うように、ドアが開いていく。
 見つめていると、中から覗く大きな瞳と、ばっちり目が合ってしまった。
 その人は、僕を見つけると、そのままゆっくりとドアを開いて、
「良かった。来てくれたんだ」と微笑んだ。
 頭の中が真っ白になった。
 全く想定していなかった状況だ。
 僕よりも少し背が高いその人は、安心したような笑顔を浮かべていた。
 卒業生の証である、百合のような造花を、胸に挿している。
 遠くから何度か見かけたことがあるだけのアイドル、梅田えりかさんが、そこに立っていた。
「早く入って」
 手を引かれて、書庫に入る。
 呆然とした僕は、されるがままだった。
92書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:07:45

 書庫は、本が日焼けしないように、厚いカーテンが引かれていて薄暗かった。
 我に返った僕が、まずしたことは、他に誰かいないかという確認だった。
 つまり、梅田さん本人を使って、僕を引っ掛けようとしているんじゃないか、ということを疑った。
 だとすると、たいしたどころではない、ものすごい凝りようだ。
 ここまで来ると、驚くを通り越して感心する。
「どうしたの?」
 きょろきょろと室内を見回している僕を不思議に思ったらしく、梅田さんは首を傾げて尋ねてきた。
 綺麗なお姉さん、といった容貌の梅田さんがするかわいらしい仕草は、僕を動揺させるのに充分すぎた。
「あ、な、なんでもないですっ」
 声が裏返ってしまって、恥ずかしい。
 僕はごまかすように、
「あの、それで、どういう用ですか?」呼び出された理由を問う。
 梅田さんは、うん、と頷くと、
「ちょっと、座ろうか」部屋の隅にある長椅子を指した。
 病院の待合室にあるような、背もたれつきの長椅子に、並んで座る。
 1人分くらい空けて座ろうと思ったら、すぐ隣に、梅田さんが腰を下ろした。
 人の体温を間近で感じて、緊張する。
 シャンプーとも香水とも違う、良い匂いが漂ってきて、気持ちがぐらつく。
 体の中でヘヴィメタが演奏されているように、騒がしい。
 頭でギター、胸にドラム。
 わけがわからなくなってきた。
 落ち着かなくなって、きょろきょろと周囲を見渡した。
 そのあたりで、笑いを堪えているんじゃないかと、人影を探すが、どこにもない。
 図書室への扉があるが、ぴったりと隙間なく閉まっている。
「なに、きょろきょろして」
「あ、いや、なんでもないんです」
 隣にいる梅田さんに向き直る。
 目が合うと、顔を赤くして、照れくさそうに俯いた。
 ここまで来て、全く考えてなかった可能性が、思考の片隅に浮かんでくる。
93書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:08:11

 何にもないんじゃないか。
 これは本当に、梅田さんに呼び出されただけなんじゃないか。
 どれくらいか、そうやって俯いていた梅田さんは、ふと顔を上げて、僕を見つめる。
 真剣なまなざし。
 意識を失いそうになるくらい、緊張が高まっている。
「あの、君が、入学した頃からずっと……その、ずっと好きでした」
 目眩がするような衝撃を受けた。上段回し蹴りをまともに食らったみたいに。
「それで、あたしは、卒業しちゃうけど……つ、付き合ってほしい、です……」
 言い切ると、ふう、と大きく息を吐いた。
 頬は赤いままだったけれど、伝えきったという安心感が見られる。
 しかし、正確には伝わっていなかった。
 言葉は頭の中に入ってくるのだが、意味として理解できないというか、
混乱というか動揺というか、とにかく、どうしていいのかわからない。
「ごめんなさいっ!」混乱したあげく、無意識にそんなことを口走っていた。「僕には自信がありません!」
 梅田さんと釣りあうわけがない。
 アイドルと付き合うなんて、できるわけがない。
 そんな思いから出てきた言葉だろうが、実際のところ、自分でもよくわからなかった。
 立ち上がろうとした僕の腕を、梅田さんがつかんだ。
 振り払おうとか、止まろうとか考えるより早く、甘い香りに包まれた。
 長い腕が僕の背中に回っている。
 耳元が吐息にくすぐられる。
「断るなんて、いや。こんなに好きなのに……!」
 柔らかい女性の体が押し付けられて、頭が破裂しそうだった。
 これがドッキリなら、早くみんな出てきてくれ、と僕は願ったが、いくら見回してもクラスメイトどころか、虫の気配さえ感じられない。
「好きなの」
 囁いて、目を閉じる。
94書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:08:55

 疑問が浮かぶ間すらなく、唇が重なる。
 柔らかくて甘い感触。
 頭が破裂してしまいそうだ。
「あたしはこんなにも、君のこと好きだから、自信持って」
 再び唇が重なる。
 僕は力が吸い取られたように、後ろに倒れてしまう。
「私のこと、好きになって」
 ファーストキスを、年上の女の子に奪われてしまった。
 キスのせいでおかしくなってしまったのか、それとも動揺していたのが正常に戻ったと言うべきなのか、
梅田さんの顔を真正面から見ることが出来た。
 優しく微笑まれて、不思議と落ち着いてきた。と言っても、さっきよりはマシ、という程度だけど。
 本来なら、こんなにも綺麗な人に告白されて、断るなんてありえないことだ。
「僕なんかで、いいんですか……?」
 気がつけば、そんな言葉が漏れていた。
「君じゃなきゃ、だめだよ」
 当然のこと、と言わんばかりの、梅田さんの返事。
 そして、3度目のキス。
 柔らかい唇を強く押し付けられると、思わず息を止めてしまった。
 2度目までは驚いて目を開いたままだったけれど、今度は瞼を下ろす余裕ができた。
 少し長めのキスが終わって、梅田さんが離れていく。
 ゆっくりと瞼を開けると、はにかんだ笑顔があった。
 笑顔を返そうとして、突然、気づいた。
 抱きしめられ、押し倒された格好になっていることに。
 目の前には、彼女の笑顔。
 体に重なる、彼女の体温。
 呼吸に混ざる彼女の香り。
 体中を全力で駆け巡っていた血液が、下半身に集まってくる。
95書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:09:22

「あ、あの、どいてもらえますか……」
 このままだと気づかれてしまう。
 そんな僕の気持ちは伝わらなかったようで、梅田さんはその体勢のまま、
「付き合ってるんだから、敬語は禁止ね」笑顔で言う。
「わ、わかりましたから、早くどいて下さい、梅田さん……」
「敬語禁止。それに、自分の彼女を呼ぶのに、苗字にさん付けはナシでしょ。“えりか”って呼び捨てね」
 ひょっとして、僕の体の変化に気づいていて、イジワルをしているんだろうか。
 とにかくここは、大人しく従っておかないと。
「わかったから、どいて。え、えりか」
 搾り出すように、呼び捨てると、満足したように笑ってくれた。
 けれど、その時にはすでに遅かった。
 充血して硬く持ち上がったペニスが、ズボンを押し上げ、梅田さんのお腹に食い込んでいる。
 布越しとはいえ、女性の体に触れているという意識が、刺激を強くする。
 目を丸くして、重なっている体を見下ろす梅田さん。
 気づかれてしまった。
 顔から火が出る、どころか、全身が燃え上がりそうなくらい恥ずかしい。
 抱きつかれてキスされただけなのに、こんなふうになってしまうなんて。
 経験のない僕には刺激が強すぎる。
 軽蔑されただろうか。
 怖くなって目も合わせられない僕は、顔を背けようとするけれど、片手を頬に添えられて、正面を向けられる。
 梅田さんの微笑。
 少し頬が赤いけれど、優しい笑みを浮かべていた。
「男の子だもんね。ごめんね、気づいてあげられなくて」
 なぜか謝られた。
96書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:09:47

 謝るのは、僕の方だ。
 口を開こうとするが、それを口付けで遮られる。
 4度目のキスに戸惑っていると、梅田さんの手のひらが、いきり立つペニスの上に重ねられた。
 下腹部から腰を伝って、快感が脳に流れ込む。
「うわぁっ! な、なにをッ!?」
 突然のことに驚いて、立ち上がろうとするけれど、梅田さんがどいてくれない。
 不安定な体勢で、しかも快感のせいで腰に力が入らなくて、起き上がれなかった。
「あんまり大きな声出すと、外に聞こえちゃうかもしれないよ」
 静かな声だけど、僕を固まらせるには充分な言葉だった。
「で、でも」
 小声で抗議する僕に、
「あたしは君の彼女だから。まかせて」と言って、僕の上からどいてくれた。
 長椅子の脇の腰を下ろし、ジッパーを下げる。
「あ、あのっ」
 体を起こそうとする僕の胸に手を置いて、押しとどめた。
「大丈夫だから」
 そう言って優しく微笑んでいる梅田さん。
 何が大丈夫なんだろうか。
 僕は何も大丈夫じゃない。
 血流が激しすぎて、目が回りそうだ。
 頭の中にもう一つ、心臓ができたみたいに、鼓動がうるさい。
 混乱しているうちに、梅田さんは下着の前開きから、血の漲ったペニスを取り出した。
 くう、と思わずうめいてしまう。甘い感覚に、体が震える。
「おっきい……」
 僕の顔と、露になったペニスとを交互に見比べながら、梅田さんが呆然と呟く。
 修学旅行や空手の合宿などで、顔に似合わず大きいと、からかわれたことはある。
 その時は聞き流していたけれど、女の子に言われると、とてつもなく恥ずかしい。
 梅田さんがおもむろに、ペニスを握ってくる。
97書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:10:09

「ぅあっ……」
 女の子の柔らかい手に触れられて、気絶しそうなくらい、気持ち良かった。
 全身から力が抜け、代わりにむず痒い感覚が満ちてくる。
 梅田さんの手が、根元の方に動くと、
「痛っ」ペニスの先端に軽い痛みが走った。
「あ、ごめんっ」慌てて手を止めた梅田さん。「まだ、剥けてないんだ」
 亀頭は半分くらいまで、皮に包まれている。
 成長とともに自然と剥けてくるらしいけれど、僕はまだだった。
 肉体の欠陥を知られたような気になって、泣きそうになる。
「大丈夫だから、ね」
 穏やかな声で言い、ペニスに顔を近づけて、唇の隙間から唾液を落とした。
 生温かい唾液が亀頭の上に垂れて、奇妙な感覚が背筋を走る。
 次々にペニスに降りかかる唾液。
 ズボンにこぼれそうになると、亀頭が唾液ごと梅田さんの手に包まれた。
 電流が走ったような感覚に、体を強張らせる僕。
「ちょっと、がまんしてね」
 梅田さんは気遣うように言うと、亀頭と包皮の境目を、マッサージするように指を動かす。
 目眩を起こすほどの快感が、頭の中で暴れまわる。
 その感覚に耐えていると、亀頭が、じわり、と生ぬるい感覚に包まれる。
 違和感に戸惑っている暇もなく、梅田さんの手が再び根元に向かって動いた。
 ゆっくりと、包皮がめくられていく。
「あ、あぁ、あっ……」
 さっきみたいな痛みはなかった。
 梅田さんの手が止まり、亀頭が完全に露出した。自分でも初めて見る。
 初めて触れる外気に、違和感を覚える。
98書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:10:33

「ちょっとだけ、大人の仲間入りだよ」
 こんなに恥ずかしくて、息苦しいのに、まだちょっとだけなのか。
 戸惑っている僕を、優しく見下ろした梅田さんの手が、上下に動く。
 亀頭にまとわりつく唾液が潤滑液となって、滑らかに擦られる。
 ほんの数回、梅田さんの柔らかい手がペニスを上下すると、下腹の奥の方から、堪えがたい感覚がこみ上げてきた。
「あ、あの、なんか……」
「イキそう?」
 僕の言葉を遮る梅田さんに、小さく頷いた。
 それを見ると、ポケットからハンカチを取り出し、亀頭を包み、その上から軽く手を当てる。
 布地に亀頭が擦れると、腹の底が熱くなり、ペニスが弾けた。
「あぁっ!」
 びくんっ、と脈打つペニス。
 熱いものがペニスの中を駆け抜けていき、先端から飛び出す。
 快感が爆発して、目の前が真っ赤になり、何も考えられなくなる。
 体中の筋肉が、鉛になったように重くて、動けない。
 潮が引いていくように、頭の中に満ちていた快感が小さくなっていく。
 梅田さんが、脈動の収まったペニスの先端を、ハンカチで拭いてくれて、手を離した。
 ハンカチの中をのぞき見て、
「すっごい、いっぱい出たよ」おかしそうに言った。
 恥ずかしくなって、目を逸らす。
 かわいい、と呟くのが聞こえた。
 まだ硬さの残るペニスをしまいながら、
「あ、あの、それ洗って、返します……」恥ずかしさを堪えて切り出した
 自分で汚してしまったので、そうするのが筋だろう。
「だめ。あたしが持って帰るぅ」
 恥ずかしいことを言いながら、中身が溢れないように、慎重に畳みながら言った。
 梅田さんが立ち上がったので、体を起こして、長椅子の隣を空けて座る。
99書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:11:18

 そのスペースに腰を下ろして、ぴったりと寄り添う梅田さん。
「ねえ、いつも、自分でする時って、どんなもの見たりしてるの?」
 主語がないので、何のことかわからなかった。
「見たり、って?」
「だからぁ、自分でする時、なに見てるの? ビデオとか、エッチなマンガとか?」
 そこでようやく、オナニーのことだと理解して、俯いた。
「ちゃんと答えて。怒らないから」
 何を怒るのかはわからないけれど、答えるまで終わらない雰囲気は伝わってくる。
 恥ずかしさに耐えて手を握り締める。
「したこと、ない、です……」
 絞り出すように、答えた。
 知識としては知っていても、僕はまだ、自分でしたことはない。
「……え?」ぱちくり、と瞬きした梅田さん。「じゃあ、今のが、初めてだった?」
 わずかに顎を引いて、首肯する。
 呆れられただろうか。
 不安になって、横目で梅田さんを窺うと、呆然としていた表情が、湧き出すように笑顔になった。
 きらきらした瞳を向けて、抱きつかれる。
「かわいいっ」
 今度ははっきりと聞こえる声。
 これまで、かわいい、と言われるのは、からかわれているような、釈然としないものがあったが、不思議とそういう気持ちにならなかった。
 胸の奥に、じわりと温かいものが、滲み出してくる感覚。
「じゃあ、あたしがこれから、いっぱい、教えてあげるね」
 眼前の梅田さんの笑顔に、妖しい色が窺えた。
 ドキリ、と心臓が打つ。
「これからは、自分でしたくなった時は、さっきしたことを思い出してね。あたしを想像してするんだよ。
あたし以外のことを考えながらしちゃだめ。わかった?」
 さっきの“怒らないから”の意味を、ようやく理解した。
 付き合うって言うのは、そういうことなんだろうか。
100書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:11:37

「は、はい。わかりました」
 梅田さんでオナニーする、と宣言したみたいで、恥ずかしかった。
 頷いたのに梅田さんは、ぷう、と頬を膨らませる。
「敬語はダメって言ったでしょ」
「ご、ごめんなさい、梅田さんっ」
 年上には敬語。道場で叩き込まれているので、反射的に敬語を使ってしまう。
 しまった、と思う間もなく、
「敬語禁止! 苗字禁止! さん付け禁止!」
 立て続けに注意される。
「あの、ごめん……気をつける」
 もっと砕けた言葉遣いを望んでいるのかもしれないけれど、今の僕にはこれが精一杯だった。
 梅田さんは小さく溜息をつくと、ううむ、と唸ってから、何か思いついたような表情になる。
「今度から敬語使ったり、さん付けしたら、外でも、人が見てても、どこだろうとキスすること」
 勝手にペナルティを取り決める。
 そんなの無理です、と抗議を口にしようとした瞬間、
「まずは、今の分ね」瞼を下ろして、唇を突き出した。
 石像のように固まっていて微動だにせず、僕がキスをしないと、動き出しそうにない。
 バクバクと破裂しそうな鼓動で震えながら、唇を、重ねた。
 瞼を開けて、
「これからは気をつけなきゃダメだよ」
「う、うん……」
 僕が頷くと、嬉しそうに微笑む梅田さん……えりか、さん。
 えりか、と呼び捨てるのはまだ抵抗があるので、頭の中では、えりかさんと呼ぶことにしよう。
 いつか、自信がついたら、きっと、えりか、と呼ぶことができる、と思う。
 それまでは……
101書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:12:38


 あの日から1年とちょっと。
 僕はいまだに、えりかさん、と呼んでいる。
 呼び捨てにできるような自信は、いつになったらつくんだろうか。
 まだ、わからない。
102書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:13:07

「ねえ、これ似合う?」
 昔のことを思い出してしまっていて、不意にかけられた声に、答えられなかった。
 ハンガーに吊るされていたミニスカートを腰に当てて、えりかさんが立っている。
 そうだ。映画を見終わった僕たちは、ショッピングに来ていたんだった。
「あ……えっと、良いと思うよ」
 慌ててしまって、そんな言葉しか出てこなかった。
「ぼーっとしてた? デート中に? 彼女の目の前で?」
 目つきが鋭くなって、にらまれる。
「あ、ご、ごめんっ。あの、昔のこと、思い出しちゃって」
「昔のこと?」
「うん……告白されたときのこと」視線をずらして、「あれ、見たら」
 視線の先には、百合の花がプリントされた、Tシャツがあった。
 卒業式の日に、えりかさんが胸に挿していた造花を思い出させた。
 えりかさんが強く抱きついたせいで、くしゃくしゃになってしまったが。
 僕が言いたいことをわかってくれたようで、すぐに笑顔を取り戻すえりかさん。
 しかし、さっきまで浮かべていたものとは違う、妖しい赤みが差していた。
 あれ? と戸惑う僕の耳元に唇を寄せ、エッチ、と囁くえりかさん。
103書く人 ◆ZBov0fGF0M :2008/05/18(日) 15:13:37

 そうじゃなくて、と言おうとした僕を遮って、
「で、これ、かわいくない? 似合う?」と、同じ質問をする。
 聞くことよりも、言うことを優先するところがある。
 そんなところには、もう慣れてきた。
 さっきはおざなりな返事しかできなかったが、改めて見ると、膝上というより、股下何センチというサイズだ。
 脚を魅せるような、短いものがえりかさんの好みだけど、僕は複雑だ。
 見たいけど、見せたくない。
「ちょっと、短くないですか?」
 もっと長いものか、せめて細めのジーンズを……

 えりかさんが、唇を尖らせている。

 ……しまった。
 僕の表情の変化に気づいて、わかってるよね? と瞼を下ろした。
 きょろきょろと、見ている人がいないのを確認して、唇を重ねる。

 これだけは、どうしても慣れない。