三橋「さア何囘でも御相手爲すツて」

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525fusianasan
「おかえり俺君!見て、オ オレ クリスマスの 準備 したっ!」
ドアを開けると、小狭い1Kの部屋はすっかりクリスマス仕様。あれえ、うちツリーとかあったっけ?
ぴかぴかの電飾に彩られたツリー。テーブルの上には、2人で食うにはあまりにでかいケーキとチキン、それにシャンパン。
そして三橋の頭には赤い三角帽子。あれだ、サンタのおっさんが被るあの帽子だ。
「俺君、嬉しいっ?」
にこにこ笑いながら尋ねてくる三橋は赤いレディサンタ服を着ている。なんぞこれ。
う…嬉しいよ。でもさ?あの…これ、いったいどうしたんだ?
「買った!」
そうか、買ったのか。買った?え、あの、金は?
「あの引出しに入ってたよ!オレ いい子にしてた カラ、きっとサンタさんのプレゼントだと思う!」
そうか、あの引出しね…あれは生活費って言うんだぜ。俺の給料日が15日って知ってたか?
まあ三橋がこれだけ喜んでるんだからよしとしよう。それになかなかあのサンタコスは悪くない。
よし、じゃあ乾杯してご馳走食べような。そう言うと三橋は頬っぺたを赤くしてぶるっと震えると、大きくうん!と頷いた。
年末年始をどう乗り切るかとか、そんなこと考えるのは後だ後々。ご馳走と三橋を食べた後だ。
よーし、シャンパン開けような。
「俺君!それ オレやりたい!」
おおいいぞ、じゃあ気をつけてな。三橋が真剣な顔になる。高校生の時、何度か観に行った試合中の三橋の表情を思い出し、懐かしくなる。
「い、いく よっ!」
ポンッ!弾けたシャンパンの栓は、蛍光灯を直撃した。真っ暗な中溢れたシャンパンの瓶を、慌てた三橋が落とす。
落ちた瓶は俺の足の小指を打ちのめした。ギャー。
「うわ わ 俺君、ごめ・・・、ふ 拭くもの」
てんぱった三橋が引っ張った布は、しょぼいコタツをちょっとだけクリスマスっぽく飾っていた白いクロス。
当然のことながら、上に乗っていたケーキやチキンは…
メリークリスマス。俺はどんな三橋でも愛してるよ。